一年の苦労をねぎらう忘年会。職場や友人、お稽古事のお知り合い。付き合いが多い人は、美味しいお酒が抜けない年末を日々過ごしたことだろう。しかし、その一方で誰も慰労せず、誰からも慰労されない立場の人もいる。なんの組織にも属さない"ニート"たちである。世の中のために自分なりに頑張っているニートだっている。自宅の警備だって大変だ。それなのに彼らに忘年会がないのは、まことに道理が通らないではないか。そこで一肌脱いだのがニートのためのインターネットラジオ「オールニートニッポン」(運営:NPOコトバノアトリエ)だ。新宿ロフトプラスワンで12月30日に『ニートのための大忘年会!2007』を開催。その模様はライブカメラコミュニティ「Stickam Japan!」でインターネットでも生中継された。現地に行かずに自宅から参加したのでレポートする。

マニアックなイベントの開催地として名高い新宿ロフトプラスワンが会場。ネットでの生中継は「オールニートニッポン」初の試みだ

インターネットで忘年会に参加した人数は第二部終了の段階で3,000人を超えたらしい。同時接続者数は煩悩の数と同じくらいか

生きづらさを抱える人よ、みんな仲間だ!

上司もいなけりゃ部下もいない。そんなニートだけに「今夜は無礼講で」なぞという決まり文句もなくスタートしたニートのための忘年会イベント。総合司会はオカルト研究家であり、作家の山口敏太郎氏と、ドキュメンタリー映画「不登校の真実」の監督としても知られる闘う漫画家の巨椋修氏。どちらも「オールニートニッポン」の本放送でおなじみの2人だ。

第一部は「絶望男~46歳、ニート、障がい者の人生」でまもなく作家デビューを果たす白井勝美氏と、2004年に刊行されて話題を呼んだ「セックスボランティア」の著者である河合香織氏、そしてパジャマ姿で登場したパフォーマンス集団「こわれ者の祭典」代表として活動する月乃光司氏の3人がゲスト。まずはトークセッションということだったので、ニートを生んだ現代社会について議論が伯仲するかと勝手に想像していたが、下ネタで盛り上がる終始ユルイ展開に。これは酒が入っているためなのか。しかし、その後は修正。白井、河合の両氏の著作の話題から「人は繋がりなくしては生きていけない」と真面目な方向へとトークは進んだ。ちょっとしんみり。ただ、その空気を最後に一気に変えたのが、月乃氏の途轍もないパフォーマンスだ。

いや、もうなんて例えればいいのか。全裸になったパンクロッカーを越える"心の全裸"を見てしまった感じ。自作の詩の朗読なのだが、その内容が凄まじい。アル中の人へ、いじめられている人へ、精神を患っている人へ、自身が体験したことを賛歌として叫ぶ。「みんな、仲間だ!」と、メッセージを贈る。異様な雰囲気にビビったのか、ここで100人を超えていた同時閲覧者が80人くらいまで減ったほどである。ともあれ優しい気持ちになった瞬間だ。

ヲタ芸パフォーマンスで会場ヒートアップ

会場が熱気に包まれ、ネットの閲覧者がいささか引いたところで第二部へ。ここでひきこもりナンパ師という不思議な肩書きを持つ夏目涼介氏が登場。なんでも昔、所属していた自衛隊でいじめを経験して、除隊後にひきこもりに。自殺まで考えたが、人生に絶望して自殺するくらいなら、ナンパして女の子と遊びまくりたいと妙な悟りを開いてナンパ師になったらしい。

その彼が同じく登場したアイドルの疋田紗也氏と桜井聖良氏を相手にナンパテクニックを見せる……ハズであったが「手つきが気持悪い」「誰でもいいなんて最低」と、なぜかフルボッコに。司会の巨椋修氏も「夏目君はもっと自然体にならないと打撃は入らないよ」と、自身の格闘経験に例えられダメ出しされるなど、完全に酒の肴になっていた。本当にナンパ師なのか、この人。

ひきこもりナンパ師による女の子の口説き方の実演。しかし、ことごとく失敗に終わる。会場入りの前にも街で玉砕していたとか

忘年会といえば余興。アイドルの桜井聖良氏のライブでは右の黒い服を着た人物がヲタ芸を疲労。その激しさはアイドル以上であった

そんな微妙にうなだれる癒し系の夏目氏を尻目に、これがなければ忘年会ではないとお決まりの余興のお時間に。一気に会場をヒートアップさせたのは桜井氏と疋田氏の持ち歌ライブだ。アイドルのファンたちがライブ会場で行う独特な踊り(?)であるヲタ芸をマスターする会場に訪れていた人物が壇上に登らされ、アイドルを超えるダンスパフォーマンスを見せれば、第一部で観衆の度肝を抜いたパジャマ姿の月乃氏も踊る。やはり会場に訪れれば良かったか。アイドルと間近で踊れたのに残念。グラス片手に一人、インターネット中継を見つめる自分涙目。後悔した。さて、ここで主催者側からチャットで発表が。延べ閲覧者数が3,000人を超えたとか。(筆者が言うのもなんだが)いやはや世の中、ニートだらけなんだなぁ。

最後はなぜか、ガチンコ怪談話に……

そして休憩を挟んで第三部。ここからは怪談話になるらしい。実際にあったガチンコ怪談をポリシーにするファンキー中村氏が登場。司会の山口氏によれば本物の怪談には言霊あり。中村氏の話は聞いただけで霊障を受けるとか。おいおい、年末になんという人を呼んでいるんだ、とツッコミを入れたのは言うまでもない。また、若手芸人NO.1の怪談語り部である吉本芸人「号泣」の島田秀平氏もゲストとして登場した。笑いで緩急をつけてくれたが、全体的には軽い展開にはならず。死人の同窓会、幽霊ホテル、霊が見える仏眼……。百物語のように次から次へと怪談が語られるということに。怖し寒し。これじゃあ年が忘れられなくなるだろう。会場にいる人は二次会でまた盛り上がるだろうから良いが、こちとら再び涙目だ。最後までその恐怖は続いて忘年会は終了と相成った。

照明が落とされた第三部。ファンキー中村氏の怪談話がマヂ怖い。忘年会だというのに忘れなれない話を聞かすのはどうなのよ?

視聴者はニート。恥ずかしがり屋が多いのか、チャットの発言は全体的に少なかったが、怪談の展開になって少しだけ盛り上がる

通常のインターネットラジオなら怪談は良質のコンテンツだろう。だが、忘年会のラストに持ってこなくてもいいのではなかろうか。一部二部の馬鹿騒ぎが、いかにもソレらしかっただけに残念だ。ニートだけにシャイなのか。あまり発言は多くなかったものの、放送終了とともにチャットがすぐに終了してしまったところも余韻が楽しめず。もし、新年会、あるいは今後もこのようなイベントが続くならチャット部分だけでも改善を期待したい。

まぁ、最後に苦言は呈してしまったが、ニートのための初のインターネット映像生中継お疲れ様でした。2008年はニート飛躍の年になりますように。パンパン(拍手)。