「Joost」で今度はテレビ業界に挑戦

年初以来話題となっているのが、Friis氏が再びZennstrom氏と組んで開始する「Joost」だ。今年10月には、クローズドベータの後にパブリックベータ段階となった。

「音楽業界、電話産業、そして次はテレビを破壊する?」というLe Meur氏の問いに対しFriis氏は「既存産業の破壊が目的ではない」と述べた。「ドットコム時代、たくさんのすばらしいアイディアがあったがブロードバンドがなかったために実現しなかった。しかし現在状況は変わった。リアルタイムのコミュニケーションができるし、テレビと同等の品質の動画も可能だ。(Joostの構想は)以前からあったものだが、プロジェクトとしてやってみることにした」。

だが、テレビの場合は(音楽や電話と違って)すでに無料だ。Joostが最初にユーザーを引き付けるにはアピールが少ないのではないか――「SkypeとJoostとの違いは、Skypeはひとつの製品であり、成熟しつつあったインターネット通信市場に投入したものだ。一方のJoostは、Joostがひとつの製品であり、それにコンテンツ、広告がある。コンテンツはローカルなもので、Skypeと比べると複雑なビジネスになるだろう」。

Joostは現在、コンテンツでWarner Bros. Television Groupなどと提携、ユーザー生成コンテンツを扱っていない。これについてFriis氏は「コンテンツは合法的なものである必要があったのと、ユーザー生成コンテンツはすでにほかがやっている。ちょっと違うことをする必要があった。そこで、高品質なコンテンツを取り上げ、高品質な画像で提供しようと考えた」。今後の目標として、メディアとよい関係を築ていくことがあるという。将来的には、アマプロが作成した高品質コンテンツの取り扱いも考えているようだ。

Joostの現在のダウンロード件数は約400万。限定ベータ時に100万で、パブリックベータにして以来、約300万のダウンロードがあったという。昨年(2006年)、約250のコンテンツプロバイダと提携し、約20000の番組を400のチャンネルにパッケージした。「今年初めには(Joostは)大きなハイプに包まれており、プレッシャーだった。現在、ひと段落しており、開発や立ち上げにフォーカスできる」とFriis氏。そして、「まだ立ち上げ段階で、ユーザー数が十分な数に達するまでには2~4年かかるだろう」と続ける。

Friis氏がZennstrom氏と組んではじめた新しいプロジェクトは、技術だけではない。2人は新たにAtomicoという企業を立ち上げ、投資ビジネスも展開している。これについて、Friis氏は、「起業家精神に投資する投資会社」と説明する。「ベンチャーキャピタルのほとんどは、ファイナンスや銀行などの専門知識はあっても起業家ではない」。

すでに、Wi-FiコミュニティのFON、Last.fm、などの企業に投資しているが、投資の際に評価するものとしては、「人、チーム」という。もちろんアイディアも必要で、そこでは「ある種のスケールが必要」と語る。