"強制表示機能"を独自に開発 - 便利な機能があることをわからせる
INSUITEは、自由にポートレットを追加できる仕組みになっている。マイコミでも、天気予報ポートレットをはじめ、さまざまなものを用意している。特に、社内の他システムに対するシングルサインオン用ポートレットは、ログイン処理をワンクリックで済ませられるため、ユーザーの業務効率化に一役買っている。
しかし、業務システム統括部 部長は、「シングルサインオン用ポートレットの利用率はそれほど高くなかった」と話す。それどころか「そういう機能があること自体を知らないユーザーが多かった」という。
そこで、「その利用価値を知ってもらうためには、実際に使ってもらうのがいちばん」と考え、各ユーザーのポータル画面に対して(ユーザーがカスタマイズした部分はそのままに)管理者側で強制的にポートレットを表示させる機能を、ドリーム・アーツに依頼して独自開発した。「ポートレット押し出し機能」と呼ばれるこの機能を使って、ユーザーに便利な機能があることを"気づかせる"ことに成功している。
同機能は、管理者側の手間がかからないように工夫されている。「新たにポートレットを強制表示させたいユーザーの情報(前回との差分)をファイルに書き込んでおくだけで、1日1回バッチが走り、自動的に追加処理が実行される。シングルサインオン用ポートレットに関しては、各ユーザーのIDとパスワードを自動設定することも可能だ」(システム開発課 担当者)。
マイコミでは最近、給与システムを刷新。年末調整の申請や、給与/賞与の確認をWebで行えるようになった。日々の業務に追われているユーザーの中には、人事や総務からの連絡事項をチェックできない者も多く、「給与システムへのログイン方法がわからない」という問い合わせが多かったが、同機能を使って給与ポートレットを各ユーザーのポータルに押し出した結果、混乱が収束したという。
加えて、一部の部署に関しては、コンテンツ管理システムなどの業務に不可欠なシステムへのシングルサインオン機能を"押し出し"た。これにより、ポータルの利用率を上げ、連絡事項の周知徹底を狙っている。
利用率向上に向けた運用努力も
以上のように、多くの機能追加を行い、グループウェアの利用率向上を図っているマイコミだが、もちろんその目標達成をシステム開発だけに頼っているわけではない。ユーザーの潜在的ニーズを探り、それに合わせたコンテンツを提供するという取り組みも行われている。
マイコミ 大阪支社では、独自のポータルを作成している。東京本社と一部の業務/社内事情が異なる各支社では、本社から提供される情報/コンテンツだけで事足りるわけではなく、不足するものもあれば、余分なものもある。その部分を最適化し、支社スタッフにとって使いやすいポータルを作成しようという狙いだ。
「大阪支社ポータルの最大の特徴は、支社内の座席表を掲載し、そこに写真付きの社員紹介ページを関連付けていること。どこの席にどんな人がいて、その内線番号はいくつなのかを簡単に調べられるようにしている。スタッフ数がそれほど多くないからこそ作れるのだが、本社にはない人気のコンテンツだ」(大阪支社 総務課長)
INSUITEではポータルの切り替えをタブで行えるため、全社共通の業務マニュアルなどを見たいときには本社のポータールにすぐに切り替えられる。普段は大阪支社のポータルを利用し、必要に応じて本社ポータルに切り替えるという使い方で、グループウェアを使用してくれるユーザーが増加している。
利用率向上の鍵は、ユーザーにとって
現在、社内連絡事項のほとんどはINSUITEによって通達している。連絡事項を周知徹底するためには、グループウェアの利用率をできるかぎり高めることが不可欠だ。
現状では「マイコミにおけるINUSITEへのログイン率は約8割」(総務部 部長)だという。上記のような取り組みにより、かなり高い数字になってきたが、もう少し改善したいと考えているようだ。
総務部 部長は、「ログイン率の向上を実現するうえでは、マイナビ(マイコミが提供する、学生向け就職情報サイト)の取り組みが参考になる」と語る。マイナビでは、サービス開始当初、会員のログイン率が非常に低かった。「人材募集企業の数を増やしていけば改善できるのではないかと考えて努力していたが、一向に上がらなかった」という。
そこで再度原因を分析し、「"学生にとって最も重要な情報"をWebページに持ってくるという方針の下、個人アカウント宛にメールで流していた適正テストや面接の結果を個人ページで確認させるように変更した」(総務部 部長)。その結果、ログイン率が急激に向上。利用者の趣向/特性に合わせて企業情報を提供するなど、サービスの幅が広がった。
業務システム統括部 部長は、「あくまでも理想」と前置きしたうえで、それと同様のことをグループウェアでも実現できないかと考えていることを明かす。「例えば、営業社員であれば『クライアントの入金が遅れた際にその旨がトップページに表示される』など、業務を進めるうえで"無くては困る情報"をポータル上に表示させることができれば、ほぼ全員が頻繁に利用してくれるはず」。
通常の業務をグループウェア上で進められるようになれば、コミュニケーションのレベルは数段上がることになる。さまざまな無駄が省けるうえ、予想もしなかったメリットが数多く現れるはずだ。経営的観点から見ても、十分に追い求める価値のある理想だと言えるだろう。