アグリゲーターとしてのNokia
「携帯電話はインタラクティブな端末であり、ここで適切な広告を配信するというのがNokiaのビジョンだ」とBaker氏は言う。実際、Nokiaが行った消費者調査で、携帯電話での広告を受け入れる素地があるという結論に達したという。Baker氏によると、消費者は「すべてを携帯電話で実現したいと思っている」という。インターネットで実現しているように、よいサービスを無料あるいは低コストで利用したいと思っており、これを支援・実現するのは広告となる。同社が7カ国で行った調査では、国により回答は異なるものの、主として途上国で楽観的で多くの人が「広告は便利な情報・エンターテインメント源」と回答したという。なお、日本は「広告にオープンだが、メリットが明確でなければならない」という理性派だったという。
「モバイル広告は現在、10年前のインターネット広告と同じ状態だ」とBaker氏は言う。Baker氏は携帯電話での広告が受け入れられるために、(1)コンテンツに表示される広告やブランドの関連性、(2)便利やエンターテインメントなどの価値、(3)コンテンツと広告の統合次の3つの要素が必須だとした。これに加えて、「パーソナルな端末であるからこそ、ユーザーに配慮したものであるべきだ」とBaker氏は言う。
これらのユーザーメリットに加え、Baker氏がもう1つ強調したのは、広告主へのメリットだ。ここではROIとなる。広告の狙いはまず認知度の改善であり、それから検討、選択、購入、ロイヤリティと深くなっていく。
Baker氏はここで例を挙げながら、モバイル広告がロイヤリティを獲得していることを示した。まずはMercedes Benzだ。同社が携帯電話で試乗会キャンペーンを打ったところ、1000人以上のユーザーを獲得した。コスト・パー・リード(ユーザー1人を獲得するコスト)は50ドルで、これはWebのコスト・パー・リードの75%以下という。またMTVのTV番組プロモーションでは、番組の予告編、写真・ブログ、クイズなどをコンテンツにしたところ、番組の放映日をアラートするサービスに50%が申し込んだという。
Nokiaの戦略はどのようなものになるのか――それは「インターネット広告を再現するのではなく、インターネットの上にイノベーションをもたらす」とBaker氏は語る。
Nokiaの広告サービスの特徴は、アグリゲーションだ。オペレータ、開発者、メディア企業、パブリッシャーをアグリゲートし、世界的にリーチすることができる。また、ワンストップショップとなることから、複数のオペレータで広告を展開できるという。また、キャンペーン、トラフィック、アクション、コストなどのROIを測定するツールも特徴となる。さらには、ユーザーがクリックした後もサポートする。このように、「広告主が信頼できるツールを提供する」とBaker氏は述べた。
今後は、マーケティングをサービスに統合し、モバイルコマース決済と直結するようにするほか、一部地域をターゲットにしたローカル広告のニーズにも応えていくという。