NTTドコモは、子ども向け携帯電話「キッズケータイ」シリーズの新製品「キッズケータイ F801i」(富士通製)を20日から発売する。従来の防犯・安心機能に加えて防水機能を搭載するなどして機能を向上。端末・グラフィックデザインにアートディレクターの佐藤可士和氏を起用し、デザイン性も強化した。価格はバリューコースで3万円台後半から4万円台前半の見込み。

キッズケータイ F801i

キッズケータイは、主に小学生を対象とした携帯電話で、2006年3月に第1弾の「SA800i」が発売された。同年12月には新色を追加したとはいえ、単一の端末ながら今年11月までの約20カ月にわたって継続的に売れ続け、累計販売数は約48万台(11月末現在)となった。所有者がすべて小学生ではない可能性はあるが、ドコモが推定したところでは、全国の小学生の約7%がキッズケータイを持っている計算になるという。

前モデルのSA800i

販売の推移

主に小学生を対象としたキッズケータイは、防犯ブザーや、ブザーと連動しての登録先への自動発信・位置情報送信、電源オフ時の位置情報送信、電源パックの取り外しに専用工具が必要、ダイヤル発信、機能制限できる「キッズモード」など、子どもの安全を守るための安心機能を搭載。さらにGPS機能を使って携帯電話の場所をPCやiモードからチェックできる「イマドコサーチ」、アクセスできるサイトを限定した「キッズiメニュー」といったサービスにも対応する。

これに対し、利用者の保護者からは防水機能、置き忘れ機能、機能別制限といった機能要望が寄せられ、子どもからは持ちやすさ、使いやすさ、大画面、子どもっぽくないもの、といった声が寄せられたという。

こうした要望に応える形でF801iでは機能を向上させた。折りたたみ型の背面ヒンジ付近にある防犯ブザーは、リングを引くことでスピーカーから、約100dBという2種類のブザー音が交互に鳴り響く。同時に、登録した最大3件の連絡先に自動音声発信がされ、さらにイマドコサーチ契約者では定期的に居場所を通知する。また、全面の円形の高輝度LED「ひかりリング」が発光し、周囲の人に視覚的にも緊急事態を知らせる。

光と音で緊急事態を知らせるひかりリング

ひかりリングには「HELP」の文字も

防犯ブザーが使えない場合、本体側面の「ちょこっと通知キー」を長押しすると、イマドコサーチ契約者に位置情報をひそかに送信できる機能も備えた。

ひかりリングは、側面の「ひかりキー」を長押しすることで、リングが点灯する「ぴかっとライト」、点滅する「あんしんぴかぴかライト」機能が利用でき、反射板のように暗い夜道などで所有者の存在が分かりやすい。

置き忘れの防止のために「おまもリモコン」を同梱。おまもリモコンと携帯本体が離れると「はなれたよアラーム」が鳴り、置き忘れを防止できるほか、端末操作のロックがかかる。おまもリモコンと携帯本体が5分以上離れるとイマドコサーチ契約者に位置情報が通知される。リモコンのボタンを押すと携帯のアラームが鳴るので、携帯が見つからない場合に見つけやすくなる。

F801i

本体背面。リングを引くことでブザーが鳴る

防水機能では、富士通製らしくIPX5/PX7等級の防水性能を実現。おまもリモコン自体もIPX5等級の防水性能を備えた。

佐藤可士和氏のデザインで、子どもっぽいという印象はないデザイン

本体側面

携帯端末の機能制限に関しては、保護者が暗証番号を設定して子供が設定を変更できない「キッズモード」や、防犯ブザー設定などを画面の指示に従うことでまとめて設定できる「あんしんセット」メニューを搭載。

右がおまもリモコン。中心の円形の機器がリモコンで、黄色のリストバンドは初回特典

キッズiメニュー

さらにiモード、メール、iアプリ、カメラなどを個別に利用制限設定ができるほか、「あんしんスケジュール」により、設定した時間に機能制限やマナーモードを自動で設定できる。

そのほか、電源オフ時に最短5分間隔(時間設定可能)で自動起動し、位置情報を送信する機能、保護者などの相手5人にシンプルな操作で電話やメールなどの連絡ができる「直デン」、直デン機能から「イマドコかんたんサーチ」機能を使って保護者の場所を探せる機能、携帯電話の適切な使い方などを悔いず形式で学べる「キッズセーフトレーニング」、秋元康氏原作の絵本アプリ「ゾウのおくりもの」や「国語辞典」「旺文社ケータイでる順」「地図アプリ for Kids'」などのコンテンツといった機能を搭載する。

また、アクセス制限サービス「キッズiモードフィルタ」に対応し、アダルトや違法サイトなどの危険なサイトへのアクセスをブロックできる。

基本的な機能はF704iをベースにしており、音楽機能やGSM対応などの一部の機能が省かれた形になる。本体サイズは105(H)×48(W)×17.8(D)mm、約120g。連続待受時間は静止時約570時間/移動時約400時間、連続通話時間は約185分、連続テレビ電話時間は約110分。液晶は2.7インチフルワイドQVGA(240×432ドット)TFT全透過型液晶、カメラは外側が有効約130万画素CMOSカメラ、内側が約32万画素CMOSカメラ。本体カラーはOrange、Light Blue、Black、Whiteの4色。

ドコモの執行役員・プロダクト&サービス本部マルチメディアサービス部長の夏野剛氏は「親バカが子供のために一生懸命作った」と話し、製品に自信を示す。夏野氏は、他社では子供向けの携帯電話が子供に人気のキャラクターを使うなどして、「お子さんが飛びつきやすそうな携帯を作って、お子さんに持ってもらおう」としていたと指摘。ドコモのキッズケータイでは、キャラクターは使わず、デザインも「当時としてはあまり子どもっぽくなかった。あえて親にも受け入れられるように」(夏野氏)しており、親子両方に受け入れられることを目指していたと説明する。

現在の累計販売台数48万台に関して夏野氏は、子ども向け携帯電話では「(携帯電話全体に対するドコモの)現在のマーケットシェア(約53%)以上ではないか」と推測する。

子どもの携帯電話利用に関しては、出会い系サイトや詐欺などの犯罪に巻き込まれたり、いじめで使われたりするなど、さまざまな問題点も指摘されている。これに対してドコモでは携帯電話の使い方を教える「ケータイ安全教室」を全国で開催。小中校生に対するだけでなく、保護者に対しても開催し、安全な使い方や保護者の対応方法を教えるとともに、このキッズケータイで、さらに子どもの安全を向上させたい考えだ。

夏野氏は、教育現場でも携帯電話を子どもが持つことへの意識がだいぶ変わってきているという。今後は、子どもが安全に携帯電話を利用するための特別なプロジェクトを学校期間と行うことが課題だということだ。

水につけてもあんしん

夏野剛氏(左)と佐藤可士和氏