ソフトバンクモバイルモバイル・メディア・コンテンツ統括部長の松本真尚氏

mobidec2007の特別講演では、NTTドコモ、KDDIに引き続き、ソフトバンクモバイル 技術統括プロダクト・サービス開発本部 モバイル・メディア・コンテンツ統括部長の松本真尚氏が「Yahoo!ケータイの一年と今後の方向性」と題して、今後のコンテンツ販売戦略について語った。

Yahoo!は、世界最大級のポータルとして圧倒的な「集客力」をもっている。これを活用して、パソコンからインターネットを利用するユーザーを、ソフトバンクモバイルの携帯電話用ポータルである「Yahoo!ケータイ」に誘導する。「パソコン、モバイル両方でインターネットを使用している層は多い。Yahoo!の力を活かしてシナジー効果をあげ、携帯電話のポータルとしてもナンバーワンを目指す」(松本部長)意向だ。ヤフー側でも、Yahoo!のサービスやコンテンツをいつでもどこでも使ってもらうようにする「Everywhere化」を全社的に進めており、この施策も、携帯電話との連携の強化と合致している。

いまや、携帯電話向けインターネットでも検索機能は不可欠となっている。ソフトバンクモバイルでは、Yahoo!ケータイの検索機能に「oneSearch」と呼ばれる仕組みを導入している。これにより、ユーザーが求めている検索結果を推測して「ニーズにマッチしたもの」を上位に表示することができる。たとえば、「六本木 ミッドタウン」というキーワードであれば画面上部には地図が示される、といった具合になる。

コンテンツでは、ソフトバンク3G加入者の場合、ユーザー課金単価で見ると「コミック」「着ビデオ」「アレンジメール」の伸びが顕著で、直近1年で3%以上上昇しているという。それらの中でも「コミック」が注目されるのはドコモ、auと共通だ。ソフトバンク向けに提供されている作品数は3万2,000タイトルを超えており、売上も作品数に比例して伸長している。「これまではやはりキラーコンテンツが牽引してきたが、わざわざ書店で探してまでは読まないがネット上で手軽に読めるなら、といった作品も増えてきた。ロングテール化が起きている」(同)状況という。

また、2007年3月末からは、1話目が無料で読める「タダコミ」を開始している。「1話目を読むと2話目も読みたくなる」(同)ことが少なくないことから、売り上げ増に貢献しており「コンテンツ保有者と我々のWin-Winの関係が構築できている」(同)とみている。このサービスでは11月1日現在、およそ1,500作品が提供されている。

ここでも検索が大きな追い風となる。電子ブック検索サービスの「e-BOOK Search」では、電子書籍9,000冊、電子コミック2万冊、写真集4,000冊を、Yahoo!ケータイの検索窓から検索することができる。さらに、利便性向上のため、電子書籍用ビューアを携帯電話にプリインスト-ルしている。タダコミでユーザーを誘導、検索ツールでほしいコンテンツを探し、ビューアで手軽に読める、といった図式ができている。

一方ゲーム分野でも、ユーザー誘引の鍵となる無料サービス「タダゲーム」を用意している。累計ダウンロード数は10月末で120万件に達し、1番組あたりの視聴数平均は約4万回/週だ。これを引き金に、積極的なユーザー向けの受け皿をさらに高度化する。12月からは、TCP/IPを採用した4パケット/秒の通信が可能な「高速オンラインゲーム」の環境を整える。迫力なるワイドゲームも強化、横画面対応タイトルは90タイトル(11月1日現在)以上そろえており、ワイドゲーム対応機端末が180万台(11月4日現在)を突破している。

音楽コンテンツについて、松本部長は「ソフトバンクモバイルはちょっと弱い」と認める。だからこそ、いま同社が特に注力している領域といえる。11月17日から開始した「S!ミュージックコネクト」は、音楽プレイヤーとポータルを一体化させたかたちでユーザーに提供し、WMA形式の楽曲を同社の携帯電話端末に容易に転送できる。「これまではPCとの連動がうまくできていなかった。PCとの連携を一層強くして、後発だからこそ、より使いやすくしていきたい」(同)としている。

携帯電話は各社の競争激化により、過剰ともいえるような高機能を備えるようになった。どれだけ多くの便利な機能をもっているかどうかが、ユーザー獲得の鍵だったからだ。松本部長は「これまでは新しい端末が出るたびに新機能が搭載されてきたが、機能は多くなりすぎ、使いきれないほどになっている。これからはユーザビリティーが重要になる」と話す。機能競争一辺倒の時期は去り、さまざま既存の要素の組み合わせ、あるいはユーザー自身が薦めるコンテンツの情報、ユーザーが真に望んでいるコンテンツを効率的に探し出せる優れた検索能力などが軸になっていくということになる。同社では「端末ベンダー、コンテンツプロバイダーと協力して、ユーザーが求めるコンテンツ、サービスを、ユーザーの視点で提供する時代にシフトしていく」とみており、このような流れに沿った戦略を推進していく方針だ。