サイバー大学学長の吉村作治氏

インターネット上で授業を行うサイバー大学は、11月28日から携帯電話を使った授業配信の検証を開始した。ソフトバンクモバイルの3G携帯電話向けに配信し、当初は無償で1科目分を配信して検証を行う。今後、正式な授業を配信していく考えだ。

サイバー大学は、全授業をインターネットで配信するネット専用の大学で、オンデマンドで講義を実施し、演習や試験なども提供するとともに、SNSやQ&Aコーナー、ディベートルームなどをネット上に設置して、学生の質問などに答える、学生間のコミュニケーションを図るといったサービスを展開している。

今回の実験では、実験用に収録した吉村作治学長の「ピラミッド・ミステリーを解く」と題した授業を配信。1章15分・4章60分の授業で、PC上では講師とプレゼンテーションのスライドが表示され、携帯電話向けではスライドと音声のみが視聴できる。そのほか、ソフトバンクの孫正義社長による特別メッセージ(3分間)も配信する。

PC版の「ピラミッド・ミステリーを解く」

こちらは携帯版

サイバー大学の学生以外でも誰でも授業を視聴できる。携帯電話を使った授業のイメージを広め、その機能や使い勝手を体感してもらうのが狙いだ。ソフトバンクモバイルの「S!番組プレイヤー」を利用し、パケット通信料が必要となるため、大学側ではパケット定額制の利用を推奨している。

システム開発にはサイバー大学に出資するソフトバンクが協力したため、当初はソフトバンクモバイルのみでの利用となるが、NTTドコモやauの携帯電話にも対応させていきたい考えだ。

吉村学長は、今回の検証は「国民に広く使ってもらい、意見を集め、問題があれば改善していくため」としており、技術的には「すぐにでも(携帯電話向け授業配信を)始められる」(吉村学長)とのことで、学期の区切りがいい来年4月か、遅くとも10月には始めたい考えを示している。

サイバー大学の授業では、演習と期末テストはPCでしか利用できないため、すべてを携帯電話だけではまかなえないが、吉村学長は演習やテストでも工夫することで携帯電話で利用可能になるとして、将来的には携帯電話だけでサイバー大学を利用できるようにしたいという。

サイバー大学は、いつでも、どこでも、誰でも受講できることで教育格差の是正と、株式会社立による透明性のある大学運営を目指して4月に開学。現在約1,850名の学生が在籍している。全科目の平均受講率は約86%だという。

吉村学長は、8割を超える出席率は、既存の通学制の大学ではほかにないと指摘。いつでも持ち歩ける携帯電話での授業配信により、この値が90%を超えると予測する。サイバー大学の授業では1回60分の授業を1章15分という単位で配信し、各章で出欠を取るため、15分ごとに一時中断して、時間をおいて次の章を受講できる。そのため、携帯電話であれば通勤電車の中など、時間の合間を縫って授業を受けられる。

Eラーニングや携帯電話での授業配信には教育効果を疑問視する声もあるが、これに対して吉村学長は、「通学生の大学では(授業の)質の担保をどうしているのか。出席率86%は、今の大学で超えている科目はない。(IT化や携帯電話の普及という)社会の流れにどうやって対応していくか、学びたいという人にどう対応するか、教育に携わるものの使命ではないか」と話し、PCや携帯電話向けのEラーニングによって、「ハンディキャップのある人、"引きこもり"の人でも授業を受けられる」(同)と利点を強調する。

授業の携帯電話向け配信については、国内ではほかに例がなく、海外でもおそらく始めてではないか、としている。