Q&Aサイト「OKWave」の運営やFAQサイト構築サービスなどを行うオウケイウェイヴは3日、電話の音声通話で質問内容を登録できるシステム「VOICE de OK」を開発したと発表した。企業のサポート窓口の補完ツールとして展開し、当面はβサービスとして提供、2008年6月から正式なサービスとして販売する予定。セキュリティソフトメーカーのトレンドマイクロが12月中旬より同社顧客向けのサポートセンターに導入し、ほかにもパソコンメーカー(具体名は未公表)1社による導入が決定している。
質問したいことを電話で話すと、内容が自動的にテキストデータに変換されてOKWaveのWebサイト上に公開される。時間をおいて再び電話をかけると、Webサイトに回答が投稿されていた場合、音声に自動変換されたその回答を聞けるので、インターネットに接続する環境のない人でもOKWaveのQ&Aサービスを利用できるようになる。
声で話した質問内容がテキストデータに自動変換され、OKWaveに掲載される。音声認識は100%うまくいくとは限らないため、元の声(加工済み)を聞くこともできる。回答に対するお礼や補足も音声で追加投稿できる |
製品の使い方や互換性などについて顧客がメーカーに電話で問い合わせるとき、サポート窓口が混雑していてオペレーターにつながらなかったり、他社製品との相性が関係するために回答が得られなかったりすることがあるが、こういった電話をOKWaveに誘導することで、サポート窓口に代わって一般のネットユーザーが質問者に対して回答を提供する形となる。同社によれば、現在OKWaveでは質問が掲載されてから最初の回答が寄せられるまでの時間は「早くて3分、遅いときでも10分程度」といい、質問を録音してから15分程度待って電話をかけ直せば回答を得られると予想している。
企業が利用している既存の音声自動応答システムに、「OKWaveで質問する」というメニューを追加する形での運用を想定。登録された質問はOKWaveのほか、「教えて!goo」(NTTレゾナント)などオウケイウェイヴのQ&Aポータルサイトを導入しているパートナーサイトにも掲載されるので、より多くのユーザーから回答を得られる。質問を表示するページには、音声の自動変換がうまく行われなかった場合のために、元の質問を音声で聞くことのできるボタンも用意される(音声はプライバシー保護のために加工される)。
Webと電話のサービスを連動させる基盤にはNTTコミュニケーションズの「Vポータルダイレクト」、音声認識・音声合成技術にはNTTアイティが開発した「SpeechRec」「FutureVoice」をそれぞれ利用した。音声認識・音声合成では、口語の文章をより正確に変換するためのチューニングを施したほか、OKWaveに掲載された既存の質問・回答や、導入企業の商品名などを分析して、VOICE de OKへの最適化を行っているという。
2008年6月の正式サービス開始以降の提供価格は、初期費用が200万円、月々の費用が基本利用料50万円+1コールあたりの従量料金500円。オウケイウェイヴでは、一般にコールセンターでオペレーターが問い合わせに答えるために必要なコストを1件あたり800~1,000円程度と見積もっており、従量料金部分をこれの半額程度に設定したとしている。また、2008年3~5月までをβサービス期間として、初期費用・月額利用料込みで3カ月500万円で提供する。
Q&Aコミュニティの利用で電話サポートの効率化を図る
オウケイウェイヴの兼元謙任社長 |
同社代表取締役社長の兼元謙任氏は顧客サポートの現状について「製品やサービスが複雑化し、商品サイクルが短くなってくるにつれて、企業はWebサイトでの情報提供などを増やしてきたが、これだけページが増えるとお客様はそれを見なくなってきている」と話す。情報を求めて企業のWebを検索した後、その企業に問い合わせを行う場合、メールを使う顧客は2割程度に限られ、およそ7割の顧客は電話を利用しているとの調査結果を提示し、企業がサポート部門にかけられる費用が限られている中で、電話によるサポート対応がますます重要になっている現状を指摘した。
電話がつながらない場合や営業時間外のサポート対応、自社商品そのものでなく商品の周辺についての情報提供などを今回の新サービスで補完することで、電話サポートの効率化を図ることが可能とする。サポート部門が本来行うべき顧客との親密な関係づくりなどに注力できるようになり、ひいては、クレーム対応に明け暮れることになりがちなサポート人員の地位向上にも貢献したいとの考え方を示した。
兼元氏は、「ユーザーに問い合わせの電話を振るなんて、こんな怖いサービスはこれまで考えられなかった。しかし、言い古された感はあるがいわゆる"Web 2.0"の流れによって、企業がお客様のコミュニティをどう取り込んで行くかは重要な課題となっており、あながち見当外れのサービスでもなくなってきた」と話す。一般ユーザーの知識と経験は重要な財産であり、それに対して対価を支払うようなサービスを、同社では今後拡大していきたいと、これからの方向性について述べた。