日本AMDは23日、東京・秋葉原で「Spider」プラットフォームのお披露目イベントを開催した。最新マザーボード・グラフィックカードの展示が行われたほか、AMDの"兄貴"こと土居憲太郎氏がプレゼン。会場は恒例のCAFFE SOLARE リナックスカフェ秋葉原店だったが、一時は店内に入りきれないほどの来場者で溢れた。

説明する日本AMD・土居憲太郎氏(写真中央)

最後は店内に入れないほどの人だかりができた

イベントタイトルは「"ネイティブ"だけじゃない ~進化し続けるプラットフォーム"Spider"~」ということで、Spiderを構成するCPU「Phenom」、チップセット「7シリーズ」、GPU「Radeon HD 3800」が今回のテーマ。マザーボードベンダー各社から7シリーズ搭載製品が紹介されたほか、日本AMD・森本竜英氏がRadeon HD 3800について、マイクロソフト・森洋孝氏がDirect3D 10について説明した。

マイクロソフト・森洋孝氏が久しぶりに登場

Second Lifeに同社の島がオープンするという話も

11月末に開催されるフェスタには兄貴も出るそうだ

さらにゲーム関連のイベントの告知もあった

そして最終セッションに、お待ちかねの"兄貴"土居憲太郎氏が登場。「Phenom」と「Spider」について説明した。プレス向け発表会と一部内容が重なる部分もあるが、秋葉原という場所柄もあり、よりコアな内容も追加されていた。

Phenomでは、同社のデスクトップ向けCPUとして初めてクワッドコアを実現したことが注目されるが、アーキテクチャも改良されている。ポイントとして兄貴があげたのは、(1)共有型L3キャッシュの搭載、(2)DDR2-1066メモリへの対応、(3)HyperTransportが3.0に高速化、(4)FPUが64ビット→128ビットに強化--の4点で、「単にクワッドコアになっただけではない」と強調。

そのほか省電力機能としては、「Cool'n'Quiet」がバージョン2.0に進化している。使用していないブロックを停止させる「CoolCore」、各コア毎にクロックを調整できる「Independent Dynamic Core」、CPUコアとメモリコントローラへの電源供給を独立させた「Dual Dynamic Power Management」といった機能を総称してCool'n'Quiet 2.0と呼んでいるもので、テスト結果も紹介された。

Phenom 9500とAthlon 64 X2 6000+の消費電力の比較。Phenomでは1コアあたり10W程度しか増加しない

1つのコアだけに負荷をかけるデモ。1番目のコアだけ2.4GHzで、そのほかは1.2GHzに下がったまま

Phenomの販売は前日の22日から始まったばかりで、買って試したユーザーはまだ少数と思われるが、BIOS設定のヒントも紹介。メモリの設定には、デュアルチャネルの「Ganged」モードとシングルチャネルの「Unganged」モードがあるそうで、もし起動時のメッセージでシングルチャネルと表示されたら、ここをチェックして欲しいそうだ。

起動時にシングルチャネルと表示されることがあるかも

BIOS設定でGanged/Ungangedモードをチェック

ただしUngangedモードでも「Interleaving」設定をオンにすれば高速になるということで、「アプリケーションによっては、UngangedモードのInterleavingオンの方が速い場合もある。通常はGangedモードでいいが、試してみて欲しい」とした。

さて、恒例のロードマップ・アップデートだが、いくつかの新情報も。現在、Phenomは「Agena」コアの9000シリーズのみだが、今後、ハイエンド向けのFXシリーズとトリプルコアの8000シリーズが2008年前半に登場する。同じアーキテクチャでデュアルコアの「Kuma」も2008年前半を予定しているが、こちらは発表があったようにAthlonブランドでの投入となる。Kumaも2MBのL3キャッシュを搭載するようだ。

デスクトップ向けCPUのロードマップ。青が65nm、赤が45nmプロセス

Phenom 9600 Black Editionや9900/9700も順次投入予定だ

その後はすぐに45nm世代が控えており、2008年末に高クロックの「Deneb FX」、クワッドコアの「Deneb」(L3あり)と「Propus」(L3なし)が登場。2009年にはトリプルコアとデュアルコアも投入される。シングルコア製品の予定が見当たらないが、新しいアーキテクチャでは開発しないということで、「来年はデュアルコアがバリューまで食い込んでくる」との見通しを示した。

プレゼンのまとめ。「AMDはトータルバランス」と強調

3GHzのAthlon 64 X2 6000+とのベンチマーク結果

会場には、7シリーズ・チップセットを搭載するマザーボードやRadeon HD 3800シリーズのグラフィックカードなどが展示されていた。

マザーボードはすでに発売済みの製品が多かったが、注目はECSが参考出品していた「RS740M-M」。チップセットの「RS740」は未発表で、同じく統合グラフィックの「RS780」との違いは不明だが、ヒートシンクの大きさから見て発熱は比較的小さいようだ。バックパネルのグラフィック出力はVGA+DVIとなっていた。

ECSが参考出品していた「RS740M-M」

サウスブリッジは「SB700」となる

グラフィックカードでは、Sapphireの「HD 3850 Ultimate 512M GDDR3 PCIE」に注目したい。これはGPUにRadeon HD 3850を搭載しながら、大型クーラーによってファンレスを実現してしまった製品。Radeon HD 3800シリーズは省電力がウリの1つとはいえ、クロックを下げずにファンレス製品が登場したのは驚きだ。12月上旬の発売を予定しており、価格は3万円前後となる見込み。

Radeon HD 3850でファンレス

カードの裏側には巨大な放熱フィン