総務省は22日、国際電気通信連合(ITU)がスイス・ジュネーブにおいて10月22日から11月16日まで開催した、2007年世界無線通信会議(WRC-07)の結果を同省Webサイトに掲載した。現在の3G(第3世代携帯電話)の後継となる4G(第4世代移動通信システム)向けの周波数として、日本としては3.4~3.6GHzなどの周波数帯の利用を推進する意向が示されている。
周波数の割り当てなどについての国際的な規律として「無線通信規則」(RR)があり、世界各国はこれに従いながら国内の電波行政を実施している。WRCはこの規則の改正を行うための会議で、3年から4年に1度の頻度で開催されている。前回は2003年に同じくジュネーブで開催されたWRC-03で、5GHz帯無線LANとして世界的に利用可能な周波数の拡大などが行われた。
ワイヤレスで1Gbpsを実現する「4G」で利用するバンドが固まる
WRC-07では、WRC-03で次回に向けての検討課題とされていた、3Gおよび4Gで使用する新たな周波数確保などについて審議された。3Gと4Gを包含した「IMT」用の周波数としては、3.4~3.6GHz(200MHz幅)、2.3~2.4GHz(100MHz幅)、698~806MHz(108MHz幅)、450~470MHz(20MHz幅)の4帯域・計428MHz幅が確保され、これらの中から各国が自国内の事情に応じて実際のIMT向け周波数を割り当てることになる。
日本ではこのうち、既に割り当てられた業務との調整をつけることが可能と考えられる、3.4~3.6GHzおよび698~806MHzを利用していく考え。ただし、698~806MHzについては将来もテレビ放送に使用する周波数帯と重なる部分があるため、IMT向けとしてはこのうち一部が割り当てられることになる。ちなみに、現在これらの周波数帯は主に放送事業者が中継用に利用している。
3.4GHz帯については、世界100カ国以上がIMTでの利用を推進することを表明しているといい、将来4Gが実用化された場合は国際的に使用できる周波数帯のメインとなる見込み。なお、今回の審議結果は、特定の国内においてこれら4つの周波数帯以外でIMTを展開することを禁止するものではないという。例えば、今回採択はされなかったものの、日本は3.4~3.6GHzに隣接する3.6GHz以上の帯域や、4.4~4.99GHzも候補として提案しており、将来こういった周波数帯を総務省が国内の4G向けに割り当てる可能性は残っている。
4Gは2010年ごろの標準化を目指しており、高速移動時で100Mbps、静止・低速移動時で1Gbpsという、現在の光ファイバーと同等またはそれ以上の伝送速度を無線で実現することを目標にしている。
日本にとって懸念だった議題もおおむね解決
4G以外の議題としては、移動通信用として世界的に需要が高まっている2.5GHz帯について、同周波数帯を利用する衛星通信と地上の移動通信が干渉することを防ぐため、衛星の出力を厳しく制限することが検討されていた。日本ではこの周波数帯で通信衛星「N-STAR」を利用した衛星携帯電話サービスがNTTドコモによって提供されているが、このサービスは非常災害時の通信にも使われるという事情があるため、制限の例外となった。
また、特に欧州などで計画されている1.4GHz帯を使う地球探査衛星を地上の電波から保護するため、同周波数帯の地上通信の出力を制限することも検討されていたが、「制限値」ではなく強制力のない「推奨値」を設けることで決着したという。日本ではこの周波数帯(1.5GHz帯)を第2世代携帯電話(PDC方式)で利用しており、制限値が設けられた場合、数年後に控えた3Gへの置き換えの妨げとなる可能性があったが、その心配はおおむね消えたといえる。