産経新聞社とマイクロソフトが業務提携し「MSN産経ニュース」をスタートさせてから1カ月が経った。編集長のひとりである片山雅文氏は「非常に順調なスタートを切ることができた」と笑顔を見せるが、そこに至るまでには数えきれないほどの葛藤と試行錯誤があったという。井口文彦編集局社会部次長も交えて、お話を伺った。(文中敬称略)

産経新聞東京本社編集局 編集長 片山雅文氏

産経新聞東京本社編集局社会部 次長 井口文彦氏

MSN産経ニュース
2007年10月1日から、それまでの「Sankei Web」にかわり「MSN産経ニュース」としてリニューアル。従来は新聞紙優先だった特ダネをWebにも掲載していく「ウェブ・ファースト」、速報性と質を追求する「ウェブ・パーフェクト」をコンセプトに掲げる。これにともない紙とWebの統括編集長(4人)を中心に、紙媒体の締め切りに左右されない編集体制へと変更した。マイクロソフトとの提携によって様々なWebツールやサービスを導入を試みるなど、インタラクティブなサイト内容も特徴となっている。

Webオペレータ作業を通じてもたらされた"意識改革"


――編集局の体制と現状を教えてください

片山 紙とWebは同じ編集局の者が担当しています。現時点でWeb専門の編集長や記者はいません。それから、Webページを作成するための専門オペレータもいません。記者が自分で記事をWeb用に加工し、見出しをつけ、アップロードしています。本来であれば、紙面レイアウトと同じようにWeb専門のオペレータを置くところですが、人員の問題もあってこのスタイルで進めていくことになりました。でも、結果的にオペレータ作業への参加が、記者の意識を大きく変えました。

10月1日からスタートした「MSN産経ニュース」

井口 (MSN産経ニュースの)スタート当初、オペレータ作業に難色を示す記者もいました。でも、(Web媒体の場合)読者からの反応がアクセス数としてダイレクトに跳ね返ってくるので、すぐに取り組み方が変わりました。ネタ選びはもちろん、見出しのつけ方、ネットでウケる切り口など、Webと紙の"報じ方"がこれほど違うとは思いませんでしたね。紙優先の時代では、記者という仕事の醍醐味は「明日の朝の一面に特ダネを書いて、世間を驚かせること」だったのですが、Webではそういう時間のマジックがきかないんですから。紙だけでは知りえなかった感覚を得たのは収穫でした。

片山 今も手探り状態で制作している面はありますが、今後、別のいい方法があれば変えるかもしれません。ただ、しばらくは記者がWebと紙を兼任する状態を続けていきます。

――24時間体制の編集で、とくに重視している時間帯はありますか?

井口 アクセス分布を考えて、昼間勤務の記者を多く配置しています。午前中から昼にかけてのアクセス状況が一日のアクセス総数を決めるということがわかりました。まずは夕刊を編集する時間帯、具体的には午前8時から午後1時くらいまでのコンテンツの量、速報性、多様性を厚くしようという考えです。

片山 極論を言えば、その時間帯にいいネタを持ってくれば、それはほぼ一日もつ(読まれ続ける)、という考えです。24時間体制といっても、夜中の3時に記事をアップしても反応は鈍いですからね。