デビュー前からハリウッド行きを公言していた日本の若き映画監督・北村龍平。ゾンビホラーとガンアクション、そしてチャンバラを融合したエンタテインメント作品『VERSUS ヴァーサス』で高い評価を得て、『あずみ』、『スカイハイ』、『ゴジラ FINAL WARS』など、多数の話題作を手がけてきた。北村監督の持ち味である切れ味鋭いアクション演出は、日本国内以上に世界で高く評価されており、ついにクライブ・バーカー原作のホラー映画『ミッドナイト・ミートトレイン(原題)』でハリウッドデビューが決定した。公開は2008年を予定しているという。

現在はハリウッドに活動の拠点を移し、『ミッドナイト~』編集作業中の北村監督が先日一時帰国。ハリウッドでの活動、そして最新作にして最高傑作と位置づける『ラブデス』の魅力について聞いた。

ハリウッドデビューは敬愛するクライブ・バーカー作品で

北村龍平監督(38)

以前からハリウッド行きを公言していた北村龍平監督。現在はどんな毎日を過ごしているのだろうか。

「ハリウッドでの本格的な活動のため、2007年の初めから住居を日本からロスに移しました。そのまま『ミッドナイト・ミートトレイン』の撮影に入って5月に終了。今は編集仕上げ作業の最中です。2008年の春に全米で公開して、それから日本公開ですね」

北村監督はホラー作家クライブ・バーカーの人気短編小説『ミッドナイト・ミートトレイン』を自身のハリウッドデビュー作に選んだ。

「面白い脚本があったからお話を受けたというだけ。製作会社が『ミリオン・ダラーベイビー』みたいな素晴らしい作品も作っている会社だし、脚本を読んだら、ただの血みどろホラーじゃなかった。ハリウッドのエージェントは色々な企画を持って来たけど、やっと撮ってもいいなという作品と巡り会ったんです」

この原作にかなりの思い入れを持つ北村監督は、映画化が困難と言われる(事実、失敗例が多い)バーカーの作品に、いつも通り全力で取り組んだ。

「僕は20年前に出た原作本を未だに持っているほどの熱烈なファンなので、彼の作品の映像化が難しい事は重々分かってます。ただ、今回は製作会社、プロデューサー、脚本と全てが素晴らしかったから、成功するという予感があった。原作は短編でそのまま映像化しても30分にも満たない。脚本はそこが良くアレンジしてあったし、僕もさらにアイデアを出して最終的にはかなり良い形になったんじゃないかな。最初は書き換えに激怒してた原作者のバーカーもその取り組みを理解してくれて、予告編的なラッシュを観た後、涙を浮かべて喜んで「また新たな企画をいっしょにやろう」と言ってくれたんです。そう言わせないと人様の原作をやる意味がない。ただ、それは僕にとっては、『ALIVE』、『あずみ』、『スカイハイ』の頃からやってきた、当たり前の事なんです」