東京国立近代美術館では、12月24日まで「日本彫刻の近代」展を開催している。

日本には古来より仏像や神像、建築装飾、置物など、今日「彫刻」と総称されるさまざまな表現が存在しているが、西洋的、近代的な意味での「彫刻」という考え方が入ってきたのは明治30年代になってから。また芸術家個人の自由な表現として認められるようになったのは明治末年から大正初めにかけてであり、以降大正から昭和、そして戦後に至るまでの彫刻の歩みにはさまざまな変転があった。

荻原守衛《坑夫》 1907年 東京国立近代美術館 撮影:橋本禎郎

同展覧会は、幕末・明治から1960年代まで100年間の近代日本彫刻史を68名の彫刻家の約100点の作品によって振り返りながら、彫刻における「近代」とは何だったのか、さまざまな角度から光を当てることで日本彫刻における近代を見直すきっかけとなりそうだ。

高村光雲 《老猿》 1893年 東京国立博物館(重要文化財) 撮影 : 高村規

堀内正和 《表裏相入円錐》 1961年 神奈川県立近代美術館 撮影 : 佐藤新一

日本彫刻史を通覧できる展覧会は少なく、高さ3m にも及ぶ竹内久一「神武天皇立像」からわずか7cmの高村光太郎「柘榴(ざくろ)」まで、さまざまな大きさ、素材による多様な彫刻が集まる同展覧会は、近代における彫刻芸術の持つ魅力を幅広く堪能できるまたとない機会といえる。