キーボードへのコダワリを説明してくれたレノボ ノートブック開発研究所の堀内光雄氏

レノボ・ジャパンは11月13日、プレス向けにテクノロジーブリーフィングを開催。ThinkPadの開発拠点である大和事業所から、ノートブック開発研究所 サブシステム技術 機構設計 テクニカルマスターの堀内光雄氏を招き、キーボード開発への取り組みについて説明した。

堀内氏は冒頭、キーボードに求められる条件として、速く打てること、タイプミスが少ないこと、長時間使用しても疲れないことを列挙。それを実現する要素として、キーフィーリング(打鍵感覚)、キーキャップの形状とキー周辺の形状、キーレイアウト、ポインティングデバイスとの組み合わせの重要性を語った。

キーフィーリングについては、最も重要だがこれだけですべてが決まるわけではないと説明。押し初めから力のピーク、そこから軽くなってから最後の押し切るまでのチカラのカーブが重要となる。

キーを押すと、PF(ピークフォース)まで徐々にチカラを入れ、そこからBP(ボトムフォース)にかけては力を入れなくても押し込める。BPを過ぎるとE(エンドポイント)まで緩和曲線をたどりながら押し込むことになる。S(スタートポイント)からE(エンドポイント)までがストロークだ

PF(ピークフォース)からBP(ボトムポイント)までがネガティブスロープと呼ばれ、クリック感などを作り出す。PFからBFまでがあまりに長いと指が疲れやすくなり、短いとカチッというクリック間はなくなる。このバランスが重要。しかも押すときだけでなく、キーが戻るときも考えておかないといけない。キーを押す時間の半分は戻る時間と考え、スムーズにキーを元に位置に戻さないといけないからだ。全体を考えた設計が重要になる。

基本的に、ノートPCはサイズが決まっているため、ストロークはなかなか変えられない。PFとBFの部材・設計を変えることで味付けしていくことになる。

PFが上に行くと押す力が必要なため重くなり、下に行くと軽くなる。BFが上に行くと落差がなくなる。ThinkPadでは、この味付けはアルファベットキーと数字キーで同じ(ファンクションキーは少し変えている)。小指で押すキーも同じにしている。同じ味付けにすることで、安定した入力が行えるようにしたのだ。

キーは台形をしていて中央がへこんでいる

キーは、シリンダー状にへこみがあり、手前を大きく削った台形をしている。これは、指でキーを押したときに手前のキーに触れないように配慮したため。このほか、[スペース]キーにかけても削られている。これも押しやすさを追求したため。

アルファベットキーとファンクションキー、矢印キーの間にはバリアと呼ばれる突起がある。これも間違えてキーを押さないようにしたためだ。またファンクションキーとESCキーの間のバリアは大きめ。[F1]キーを押すとHELPが起動する。[ESC]キーを押したときに間違って[F1]キーに触れないようにしているのだ。このようにキー自体の形だけでなくレイアウトも考えて設計している。

ノートPCのポインティングデバイスでは、タッチパッドが主流だが、ThinkPadではトラックポイントにこだわっている

最近のほとんどのノートPCは、ポインティングデバイスとしてタッチパッドを採用している。一方ThinkPadは、トラックポイントにこだわっている。

トラックポイントの一番の良さは、手をホームポジションから離さなくてよいこと。タッチパッドだと、ポインターを動かそうとすると指をタッチパッドまで移動させなければならない。文字入力に戻るときには、指もホームポジションまで戻す。この移動を最低限にし、高速な文字入力を実現している。このほか、触れただけでポインターが動くこともない。理想的なポインティングデバイスとしているのだ。

今後どのようなキーボードが主流になるかは分からないが、今回のブリーフィングで、レノボのキーボードへのコダワリの一端が垣間見られた。