KDDI、沖縄セルラーによる携帯電話の新販売方式「au買い方セレクト」が12日、全国のau携帯電話取扱店で開始された。同じ端末を2年間継続利用することを前提に、従来通り比較的低価格で端末を購入できる「フルサポートコース」と、端末価格が値上がりする代わりに、解約に関する制限がないほか基本料金の安い専用プランも選択できる「シンプルコース」が提供され、今後新規購入・機種変更を行うau加入者は必ずいずれかの コースを選択する必要がある。
「au買い方セレクト」に対応した価格表示が始まった都内の家電量販店(撮影協力:ビックカメラ有楽町店本館) |
販売店では、新しい販売方式に対応するためこの日から売り場に掲示する値札を変更。従来、au携帯電話の価格表示は「新規加入」のほか、機種変更では「6カ月以内」「7カ月以上」「13カ月以上」「25カ月以上」のように同じ端末をどれだけの期間継続利用したかによって分けられていたが、au買い方セレクトの導入によって新規・機種変更や利用期間による区別がなくなり、「フルサポートコース」「シンプルコース」の2種類の価格だけが表示されるようになった。
多くの店舗では、従来でいう「25カ月以上」の価格をフルサポートコースでそのまま継承した。一例では、高機能機の「W54T」が16,000~17,000円程度、中級機の「W53S」が10,000~11,000円程度などとなっている。端末の利用期間による店頭価格の違いはなくなったが、フルサポートコースでは2年間の契約期間中に機種変更を行う場合、12カ月目までの場合18,900円、18カ月目までの場合12,600円、24カ月目までの場合6,300円の「解除料」を支払う必要があるため、実質的には、これまでと同様に期間に応じて機種変更費用は変わることになる。
新規・機種変更や継続利用期間による区別のなくなった価格表示 |
機種変更の頻度が2年に1回以下だった加入者にとっては、au買い方セレクトの導入後も大きな変更はない。一方、これまで「13カ月以上」と「25カ月以上」の機種変更価格には多くの機種で1,000円程度の違いしかなかったため、2年以内に1回の頻度で機種変更をしていた場合、今後は解除料の負担が増す。特に18カ月以内での機種変更の場合解除料が大きくなる。
1年以内で新しい機種を購入する、機種変更のヘビーユーザーにとっても当然負担増となるわけだが、現時点で継続利用が7~12カ月の加入者にとっては、この先しばらくの期間に限り、au買い方セレクトの導入は有利に働くこともある。フルサポートコースでの購入は、現在の端末を7カ月以上利用していれば可能なので、今回に限ってはわずか7カ月の継続利用で、従来の「25カ月以上」相当の価格で機種変更できることになる。
新設の「シンプルコース」は目立たない滑り出し
継続利用期間に条件のないシンプルコースで購入する場合、価格は全機種一律でフルサポートコースの21,000円増しとなる。端末料金が高くなる代わりに、従来の料金プランに加えて新設の専用プラン「シンプルプランS」「シンプルプランL」が選択可能となる。
シンプルプランSの場合、無料通話は付かないものの基本使用料が月額1,050円なので、着信専用の使い方には適している。シンプルプランLは同じく無料通話なしで基本使用料が月額2,625円で、通話料は全プラン中最安の1分10円となるので、通話分数が非常に多い場合に向いているが、無料通話分が無いことを考慮すると一般的には得になるケースは少なく、月によって極端に通話量の差がある場合など、やや特殊な用途向けのプランとなっている。また、シンプルコースでは、機種変更費用などに充当できるポイントの付与機会がフルサポートコースより小さい。
いずれにしても、一般的な携帯電話の利用スタイルではシンプルコースを選択して大きなメリットが得られる場合は限られ、待ち受け用の"セカンド携帯"などに向けた独特の体系となっている。そのため、はじめからフルサポートコースでの購入を前提として、シンプルプランの価格は掲示していない販売店も見受けられた。また、変わった例としては、CDMA 1Xの旧モデルの一部など、価格が21,000円以下に下がった機種を「シンプルコース専用」として提供している場合もあった。
"1円携帯"はなくならず
なお、店頭に大きく掲げられた値札からは新規契約と機種変更の価格差は消えたものの、販売店によっては、「ダブル定額」など指定されたいくつかのオプションに加入することを条件に、フルサポートコースでの新規加入者に限り高額機種も「1円」など無料または無料同然で提供している例が多く見られた。フルサポートコースとシンプルコースの価格差は21,000円だが、実際にはKDDIから販売代理店に対してそれ以上の販売奨励金が支払われており、その余剰分を原資として特別値引きを行っている格好だ。
KDDIでは2008年1月31日までにフルサポートコースで端末を購入した加入者に限り、1,050円分のポイントをプレゼントするほか、端末の長期保証サービスに相当する「安心ケータイサポート」の月額料金(315円)を最大3カ月間無料にするキャンペーンを実施し、フルサポートコースへの誘導を図る。
今月下旬ごろには注目機種の「INFOBAR 2」が発売される予定で、それに続いて年末いっぱいまで冬の新機種が次々と投入される。年末商戦では、NTTドコモの高機能機「905i」シリーズや、6カ月連続で純増トップを走るソフトバンクモバイルの勢いがぶつかる形となり、各社の販売施策が消費者の目にどう映るかが注目される。
本稿中の価格等は12日現在の情報であり、今後変更される可能性があります。また、最適な料金プランは利用形態によって異なります。購入時は店頭で価格・料金体系を十分ご確認ください。