現代ヨーロッパ美術を牽引するスイス人女性アーティスト、ピピロッティ・リストによる展覧会「からから」が11月17日より、原美術館(東京都品川区)で開催される。リストにとって日本の美術館における初個展。思いや感覚をひとつひとつ丁寧にすくい上げながら、それを形にしていく姿と作品に、多くの人々が共感を覚える代表作10点が一堂に会する。開催期間は2008年2月11日まで。

Das Zimmer , 1994/2000, audio video installation (installation view at Kunstmuseum St. Gallen, St. Gallen/CH; photo by Stefan Rohner),courtesy of the artist and Hauser & Wirth Zürich London

リストは、ミュージックグループのステージデザイナー等を経て、1980年代後半よりビデオインスタレーションを展開。1997年のヴェネチア・ビエンナーレに出品した「Ever Is Over All」が若手作家優秀賞を受賞し、一躍、現代美術界の寵児となった。「物事のポジティヴな面を見るようにしている」と度々語っており、視点を変えることで既存の価値観と折り合いをつけつつ、それでもぶつかりもがく自分の無様な姿そのものを生きる証として肯定し、形にしようとしている。

Ever Is Over All, 1997, audio video installation, courtesy of the artist and Hauser & Wirth Zürich London

同展のユニークな題名もリスト自身がつけたもので、乾燥した状態を表す擬態語でもあり、屈託のない高らかな笑い声を表す擬声語でもある日本語の「からから」という言葉からきている。作品を作り続けることで満たしたい欲求がある一方で、学問的な難しいフェミニズムを超えポジティヴに生きるリストの現在を端的に表す言葉と言えよう。

同展では大型インスタレーション「Das Zimmer (The Room)」(1994 / 2007年)を始めヴェネチア ビエンナーレで話題を独占した映像「Ever Is Over All」(1997年)、そして今年制作された「A la belle etoile (Under The Sky)」などを出品。「Ever Is Over All」では、うら若き女性が花を小脇に抱えて楽しそうに路上を歩きながら、駐車車両の窓ガラスを次々と叩き割っていく。可憐さと暴力性という相反する2つの概念がここではひとつになり、見慣れた景色を一変させている。

I Couldn’t Agree With You More, 1999, audio video installation, courtesy of the artist and Hauser & Wirth Zürich London

リストの作品は、一見とても軽やかに感じられるが、一方で歪んでグロテスクでもあり、決して目に心地良いものばかりではない。しかし、その姿はどこか滑稽で微笑ましく、またそれを優しく見つめる外部の眼差しも感じられる。

入館料は一般1000円、大高生700 円、小中生500 円。時間は11時~17時(水曜日は20時まで開館、入館は閉館時刻の30分前まで)。休館日は12月25日、2008年1月4日と1月15日。11月17日の14時~15時30分には「Meet the Artist: Pipilotti Rist─ピピロッティ リスト講演会」(予約制)、日・祝日には同館学芸員によるギャラリーガイド(14時30分より30分程度)が行われる。