10月1日にβ第2版が公開されたAIRとFlex 3。先週開催されたAdobe MAXでも新機能の概要が紹介され、いよいよ正式リリースが近づいてきたという印象を受ける。本誌は、現在大きな注目を浴びる両テクノロジーにの開発背景や目玉機能、将来像について米Adobe、Flex EvangelistのTed Patrick氏に話を聞いた。

--AIR/Flexの特徴や戦略、誕生背景について教えてください

米Adobe、Flex EvangelistのTed Patrick氏

AIRは、ソフトウェアを実装し、デプロイするためのプラットフォームで、デスクトップをターゲットにしています。ご存じのように、Flash PlayerはWebブラウザをターゲットとしたプラットフォームです。そういう意味では、両者は「横並び」の技術ではありますが、異なるものです。

HTMLとFlashは、クロスプラットフォームのWebブラウザアプリケーションを作るために長らく使われてきた技術です。AIRは、(デスクトップアプリケーションに対して)そうしたクロスプラットフォーム性を提供します。AIRアプリケーションは3つのOS(Windows、Mac、Linux)上で同様に動作します。

つまり、これまでWebアプリケーションを作っていた開発者が、デスクトップでも同じような成功を収めることができる、それを実現するのがAIRなのです。このことが非常に重要です。一度書けばどのOSでも同様に動作する、そうしたデスクトップアプリケーションを、「Web開発者が作る」ことを可能にするのです。

今後も、AIRには機能をどんどん追加していきます。OSが持つネイティブな機能をより多く取り込み、できるだけOSと深く統合できるように改善していきます。

AIRの最初のリリースでは、クロスプラットフォームの基盤を作成することにフォーカスしています。その上で、さらにパワフルなソフトウェアを構築できるよう強化していきます。

戦略については、非常に繊細なかじ取りが必要とされます。というのは、より多種多様なマシン上で動作するアプリケーションを開発できるようにする必要がある一方で、それぞれのプラットフォームにおけるクオリティに関しても、これまで以上にリッチなものが求められるからです。

私が思うに、どんなHTML、Flash、Flexの開発者たちでも、クリエイター市場向けのデスクトップアプリケーションを書くことができるという可能性は、いまだかつて見たことのないものです。

--開発者を増やすうえで何か戦略のようなものがありますか

AIRは二つの側面を持っています。HTML、JavaScript、その他Web互換のあらゆるファイルフォーマットを使って開発を行うことができるという点、もしくはFlash Player、つまりSWFを使って開発を行うことができるという点です。

この二つの側面を持っているということから、我々のデベロッパーベースは単純にこれまでの倍になると考えています。特に日本においては、Flexが非常に伸びていると感じています。

--AIRが開発者に与えるメリットとは、どのようなものでしょうか

これまでFlexを使っていたデベロッパーにとっては、AIRを使うことによってWeb、デスクトップの両方で自分のアプリケーションを使ってもらえるということで、開発者にとってもチャンスが広がるのではないか、と思っています。

アメリカの場合は、現在Flexのデベロッパーが不足しています。今の市場の状態を考えると、Flex開発においては供給よりも需要がはるかに上回っています。開発者にとっては、Javaや.NET、その他のプログラミング言語からFlexに移行することで、仕事の幅が格段に広がると思っています。

--Flexの需要が高まっている要因としては、やはり、他の技術に比べてFlexの開発が容易だ、という点が大きいのでしょうか

今Flexの競合と言えるのは、やはりAjaxやAjaxコンポーネントです。しかし現在のところ、生産性の高さという点ではFlexに軍配が上がります。その理由は、Flexアプリケーションがデプロイされる方法にあると思います。

その一番根幹にあるのは、FlexがFlash Playerに依存しているということです。そしてそのFlash Playerはあらゆるブラウザで完璧に互換性があります。

他のツールを使った場合はどうしても互換性の問題が出てきて、個別に対応する必要がありますが、Flex/Flash Playerであればその心配はないということです。

Flashを使うことで、どこでそれを走らせても全く同じ見た目になるということが重要なのです。それによって互換性と信頼性の確保が得られ、そしてなんといっても開発のサイクルを短縮できるということが言えると思います。