競合はどうだろう。大手の動きはどのような影響を与えるのだろうか。米Oracle、独SAPなど大手は、少しずつオンデマンド戦略を固めつつあるが、これら大手は完全に自社製品をSaaSにするのだろうか。
「大手ベンダがアプリケーションを一から作り直すことは考えにくい」というのは、Atlas VenturesのRycker氏。既存の業務アプリケーション大手はSaaSの潮流をまだ全面的に受け入れておらず、それもベンチャーの立ち上がりにつながっているのではないか、とRycker氏は分析する。「大企業は自分たちではSaaSを構築できない。Googleですら、買収によりSaaSコンポーネントを獲得している」とRycker氏は指摘する。
大企業の動きは「自分たちにはチャンス」というのは、SapotekのRand氏だ。「Microsoft、Adobe Systemsなどにとって、開発ツールの提供は重要なビジネスだ。ここではWebアプリケーションのトレンドを受け入れざるを得ない。オープンソースもプラットフォームを巡る競合に参加している。このようなカオスは、開発に専念している自分たちにはプラスに動く」とRand氏は説明する。
コンシューマ分野のSaaSはどうだろうか? 結局のところ、世界のPCの約75%がコンシューマなのだ。これらの多くは大容量のHDDを持つ。SaaSを利用するモチベーションとなるのは何か。
自分のPC環境をバーチャルで利用できるSapotekのRand氏は、「当初、PCを持たない人向けのサービスになるかと思ったが、実際はPCを所有するユーザーがよく利用している」と明かす。電子メール、オフィスソフトで強力にプッシュしているGoogleが、コンシューマ分野のSaaSのけん引役となるだろう、と参加者は見る。だが、Sapotekにせよ、Googleにせよ、サービスはすべて無料だ。無料は大きな魅力だが、プロバイダは課金体系などで財務的に健全であることを示す必要がある、とRycker氏はいう。Sapotekは現在、広告モデルをとっており、将来的に有料のプレミアムサービスを提供する計画だ。
参加者はSaaSの将来に楽観的だ。現在、パワーはベンダから顧客側にシフトしており、顧客は限定的に導入し、経過をみながら拡大していくパターンという。この背景には、ソフトウェアのTOCがある。SaaSは、コスト構造を完全に変えるものとなる。
帯域とデータセンターがあり、ユーザーは処理能力の高い端末でアクセスする、これが将来のモデルとSimon氏はいう。このようなSaaSの潮流は、スマートフォンなどモバイル分野でも起こるだろうという。「今後、データサイズ、アプリケーションのサイズ、アーキテクチャなどの制限を受けながら、最終的にはほとんどのアプリケーションがSaaSベースになるだろう」(Simon氏)。