来年の北京オリンピックを控え、北京では地下鉄の建設ラッシュが始まっている。10月には南北を結ぶ新しい「5号線」が開通。オリンピック前までには空港連絡線やオリンピック会場への支線などさらに数路線が開業予定だ。また地下鉄の開業に合わせて市内バスも路線の整理や車両更新などが進み、今ではおんボロバスも見かけることもなくなった。バス乗車時に乗降口に関係なく殺到して我先にと乗り込む姿も消えているが、これは非接触型ICカード型乗車券の普及が進んだおかげだ。

地下鉄とバスで使える交通カード

北京の地下鉄は現在5路線が開業している。以前は環状線と東西に伸びる路線だけというシンプルな作りであり、運賃は全線均一。乗車時は切符というよりも入場票と呼べそうな、ぺらぺらの紙切れを窓口で購入し、ホーム入場時に入り口係官に渡すだけだった。すなわち降りるときに改札は無かったのだ。その後、郊外を走る13号線が開業したが、新規路線であったことと既存の路線と接続駅でいったん乗換えが必要な構造だったことから、改札システムは一気に近代化され、日本製の自動改札機が設置された。旧路線は紙切れと係員による改札、新線は磁気式の自動改札と、まったく違う2つのシステムがしばらく併用されていたのだ。

北京でも地下鉄はすっかり市民の足となっている

現在の路線図。来年のオリンピックにはあと3本の新線が開業予定だ

しかし2006年からは地下鉄とバスに非接触型IC乗車券である交通カードが導入され、これで毎回切符を買うことなく、キャッシュレスで乗車できるようになったのだ。また5号線が開通してからは13号線の乗り継ぎ駅を改良し、改札を出ることなく全路線の乗り換えができるようになった。運賃も全路線2元(約30円)均一に値下げされたことにより、乗客も毎月ごとに増えているという。

北京で利用されている非接触カードICの乗車券。規格はPhilipsによるMIFARE

こちらは乗車券。入場の時のみ利用するため切符というより乗車票といった感じだ。駅の窓口で購入する

このため13号線では、以前設置されていた日本の自動改札にはカバーがかけられ使用されず、簡易タイプのICカード読み取り機が設置されている。横に係員がいてその目の前で交通カードをかざせばよいわけだ。この読み取り機は全路線に設置されているが、5号線などでは新しい改札機の設置準備も始まっており、来年のオリンピック前に他の路線が開業した際には全駅に自動改札が導入され、均一制から距離制への運賃改定、入場時だけではなく出場時も改札、のように変更されるようだ。

なお、この交通カードは街中の主要なバスターミナルや交差点にあるカード売り場か、一部地下鉄の駅で販売されている。最低価格は50元でうち20元がデポジットだ。現在は販売箇所が限られているが、地下鉄全駅に自動改札機と自販機が設置されるころにはすべての駅で購入できるようになるのだろう。

13号線では開業時から投入された日本製の改札機にカバーがかけられ、奥のICカード読み取り機で入場するようになっている

5号線の駅構内に設置中の切符自販機。日本製だ

ところで地下鉄で携帯は使える?

さて、日本とは携帯利用マナーの異なる中国・北京。地下鉄内では携帯電話は利用できるのだろうか? 中国では公共交通機関内での通話は禁止はされておらず、回りを気にして小声で話す必要は無い。そのためいきなり隣に座っている乗客が大声を上げるなんてことも日常茶飯事である。しかし北京の地下鉄はホームや駅付近では電波が切れずに利用できるものの、駅間のトンネル内にはアンテナが設置されていないようで、駅を出発してしばらくすると携帯電話の待ち受け画面からアンテナマークが消えてしまう。最新の5号線は直線区間が長いせいか電波がとぎれにくいようだが、それでも区間によっては完全に利用できないエリアがあるなど、やはりトンネルにはアンテナは設置されていないようだ。長電話をするならば電車に乗らずにホームで通話してから乗車したほうがよさそうである。

地下鉄車内で携帯を使ってみると、駅を出てトンネルに入ると電波状態が悪くなる(左)。駅間が長い場合はたいてい圏外になってしまう(右)