教師の成長が重要な要素
未来の学校を構築していくうえで欠かせないのが、教員の養成だ。「我々は、教師がどう成長していくかが重要な要素だと考えている」(Young氏)。その具体的な支援プログラムが、「PiL(Partners in Learning)」事業になる。教員のICTスキル習得のためのトレーニングや生徒の学習能力を向上させる機能を学校に与えることを目的とし、現在101カ国、7,000万人以上の生徒と360万人以上の教師が関わっている。
ITF審査員やSOF運営にも関わるBruce Dixon氏は、PiL事業が教育現場にもたらした変化についてこう評価する。
「従来、教育現場というのは、どうしても先生対生徒という閉ざされた空間になりがちで、先生同士が交流する場が少ないという問題点があった。学校や地域、国の枠組みを越えた先生同士の交流がなされるというのはまれで、その点において、テクノロジーがそれを可能にしたということが非常に画期的だ」
先に紹介した教師向けポータルサイトITNやBackPack.Net、ISP、日本のNEXTプロジェクトの例もPiLの一環なのである。
親とコミュニティを巻き込んだ教育を
では、ICTの利用促進が、逆にテクノロジーへの依存によるコミュニケーション不足を招く恐れはないのだろうか。記者からも疑問視する声が上がり、Dixon氏も「確かにそういった心配はある」とした。しかし、「PCを使うようになったことで、子供たちがクラスメイトと協力して作業する機会は増えたし、何かを書くことも増えた」(Dixon氏)という。要するに、ICTに頼りすぎは危険なのでは? という不安は、実際の教育内容に対する親やコミュニティの知識不足によるところも大きいようだ。そのためにもDixon氏は、「保護者やコミュニティを子供たちの教育に巻き込むような関係を築いてゆかねばならない」と教育側の説明責任を強調した。