日本放送協会(以下、NHK)は5日、NHK総合テレビ22:00~よりNHKスペシャル「眠れる再生力を呼びさませ~脳梗塞・心筋梗塞治療への挑戦~」を放映する。
同番組は、人に秘められた再生力を引き出し、脳梗塞や心筋梗塞を治療しようという取り組みを紹介した49分のドキュメンタリー番組。人には、イモリなど両生類のような失った組織を再生できるほど高い能力はないと考えられていた。しかし最近の研究で、人間にも秘めた「再生力」があることが分かってきたという。この再生力を使って、今まで困難だと思われていた脳梗塞や心筋梗塞で傷ついた細胞を再生させる臨床試験が行われている。そういった現場を同番組では取材する。
番組では2007年1月、札幌医科大学付属病院脳神経外科の宝金清博教授が責任者となって始まった脳梗塞の臨床試験を取材。臨床試験は、患者自身の骨髄にある「骨髄幹細胞」を取り出して培養させ、患者の血管へ注入するというもの。幹細胞の持つ再生力を発揮させ、脳梗塞によって傷ついた脳神経を再生させるという試みだ。
同番組制作チームでは、この臨床試験を8カ月に渡って密着取材し、従来では考えられない脳梗塞患者の回復ぶりを紹介する。さらに2004年4月より、ドイツで行われている心筋梗塞患者に対する再生治療の臨床試験にも迫る。
2007年10月26日に学会で最初の報告なされた段階で、札幌医科大学が行う臨床試験への参加人数は8名。その全員に何らかの変化が見られるという。「骨髄幹細胞を使った再生医療の大きな特徴は、自分自身の細胞を体内に戻すので、拒絶反応の問題や他人の受精卵を使うといった倫理的問題がないことです。まだ臨床試験の段階ですが、多くの人に知ってもらうことで研究を加速させ、1日も早く脳梗塞や心筋梗塞の新たな治療方法が確立されることを願い、番組を制作しました」(制作局科学・環境番組チーフプロデューサー:松本俊博氏)。日本やドイツにおける再生医療の現在と、人体に秘められている再生力の可能性について知ることのできる内容となっている。