――競合については、どのように見ていますか。まずLinuxからお聞かせください。
Forsyth氏:モバイルLinuxを巡り、Linux Phone Standards(LiPS)、LiMo Foundationなど複数の連合、コンソシアムが誕生しています。それぞれが標準を作ろうとしており、開発者、市場は混乱しています。サードパーティの開発者は直近の四半期が重要な状態で、失敗は致命的です。Symbian自身、設立後最初の5年、6年、このような開発者とやり取りを行ってきたので、われわれは現状を知っています。彼らにしてみれば、リソースを集めて開発することは大きなリスクを伴うことです。サードパーティの開発者が望んでいることは、いま現在存在する市場に向けたソリューションを利用することです。
現在、Linuxの市場は分断化しており、安定したプラットフォームはありません。
――それでも、新しいコンソシアムができる。これには何か理由があるのでは?
Forsyth氏:Linuxを選択する場合、ビジネス的な決断ではないことが多いようです。ビジネスの決断を行うのであれば、もっとしっかりしたものが必要です。端末メーカーでLinuxを採用しているところを見ると、どこも収益を出せずに苦しんでいます。このように、モバイルLinuxは厳しい状況にあると思います。実際、コンソシアムを立ち上げた後にわれわれのところに戻った企業もあります。
Symbianでは、単なる市場シェアだけではなく、端末の販売価格も調査しています。Symbian OSを採用した端末は大きな収益をもたらしており、財務的に健全といえます。
――次に、米Microsoftとの競争はどうでしょうか?
Forsyth氏:この10年近く、Microsoftは常に同じメッセージを出しています。『今後、(モバイル市場を)重視し、強化・投資を行っていく』と言い続けているのです。誰も気が付いていないようですが、Microsoftはこれを1998年から言い続けています。Symbianは、Microsoftが「Stinger」(注:Windows CE 3.0ベースの携帯電話向けOS。「Stinger」はコードネーム)を発表したのと同じ頃にスタートしました。当時、SymbianもMicrosoftも売上げはゼロでした。つまり、競争は同じスタート地点から始まったのであり、Symbianにすでにシェアがあり、Microsoftが進出してくるというストーリーではありませんでした。われわれは、それまでにない市場を作り、その市場でシェアを獲得したのです。
私が理解している限り、Microsoftは現在、「BlackBerry」の勢力を懸念しているようです。われわれはパートナー戦略を取るので、Research In Motion(RIM:BlackBerryを提供するベンダー)と提携しています。RIMの技術は素晴らしく、たくさんのサーバーインストール数を誇っています。サーバーがインストールされているということは、長期的に存在していくということです。
携帯端末「BlackBerry」 |
――MicrosoftがSymbianに勝てない理由をどのように分析しますか?
Forsyth氏:Symbianには、Microsoftにはない2つの資産があります。1つ目として、われわれにはベンダーが差別化を実現するプラットフォームがあります。端末ベンダーは年間数億台にも上る端末を販売しており、そのために何が必要かを知っています。それは、さまざまなユーザー層に向けて端末を作ることです。差別化が可能なプラットフォームは、端末ベンダーの成功に不可欠です。
2つ目は、Symbianは業界が作った企業という点です。われわれは、バリューチェーンの間でバリューをシフトしていこうとは考えていません。われわれの目標は、端末ベンダーの成功です。Microsoftの場合、"ゲームは常に、Microsoftの勝利で終わる"ということを業界は知っています。これは、PC市場で起こりました。PCベンダー、消費者、誰にもよい結果をもたらしていません。選択肢は限られてしまいました。