ビックカメラで開始されたDellの店頭販売(ビックカメラ有楽町)

一方、もうひとつの方針が、コンシューマPC分野において、量販店を通じた間接販売をさらに強化していく考えを示したことだ。

23年前の創業以来、直販を主軸に事業を拡大してきたDellだが、日本においては今年7月、ビックカメラと協業を発表。同店で、Dell製コンシューマPCを取り扱うことになった。さらに、ビックカメラのグループ会社であるソフマップでも同社製品の店頭販売を開始することを発表している。

これは日本だけに留まらない戦略だ。北米ではウォールマートでの取り扱いを開始。同様に、中国、ロシアでも小売店を通じた間接販売を開始している。

デル会長兼CEOは、「すでにパートナーシップを発表している国以外にも、英国、フランス、韓国、インドなどでもパートナーシップを拡大する。全世界1万店での取り扱いが可能になったが、これはまだ第1ステップに過ぎない」として、今後も間接販売比率を高めていく姿勢を明らかにした。

全世界におけるパソコンメーカーシェアでは、首位の座をHewlett-Packardに明け渡したDellにとって、全売り上げの15%に留まっているコンシューマPC事業の拡大は、首位奪還という観点からも避けては通れない課題。これまでの直販ルートだけの販売に加えて、間接販売を活用することで新たな販売機会を創出。これにより出荷台数を拡大する狙いがあるといえよう。

パソコン業界は再編の時期を迎えている。

2005年のLenovoによるIBMのPC事業部門の買収を皮切りに、台湾Acerが米Gatewayを買収し、Lenovoを抜いてシェア第3位に浮上。日本でも日立製作所がコンシューマPC事業からの撤退を発表するなど、業界再編が相次いでいる。

Dell会長兼CEOも、「PC業界における統合は、今後さらに加速していくことになる。これが加速しても驚くことはなにもない」とコメント。「新興国への展開を見ても、大規模な企業であることが大切である。当社としても買収を検討したが、そぐわずに見送った例もある」として、規模を追求している姿勢を示している。

同氏による今回の2つの方針発表は、Dellがパソコン業界における生き残りを目指した「転換」のひとつといえそうだ。