モーターショーの会場を歩いていると、流麗なコンセプトカーや最新技術を注ぎ込んだモデルとはちょっと違うが、つい目を止めてしまうようなクルマも数多く置かれている。ここではそんなモデルを集めてみた。
モノを運ぶことは男の夢である
ダイハツの「MUD MASTER-C(マッドマスターC)」と、スズキの「X-HEAD (エックス・ヘッド)」は、どちらも4輪駆動車のタフなイメージを強調したコンセプトモデルだ。
「MUD MASTER-C」は耐久性の高いフレーム付ボディと16インチのオフロードタイヤなどで高い走破性を持たせたコンパクト・トランスポーター。軽ワンボックスがベースのようだが、幅は軽規格を越えている。多くのアタッチメントを想定しているが、展示車はマウンテンバイクサポートモデルということで、3面大型ガルウィングドアを採用している。
スズキの「X-HEAD」は同社の「ジムニー」や「キャリイ」からの発想。「MUD MASTER-C」よりもひとまわり大きく、エンジンは1,400ccクラスとなる。やはりキャンピング用や都会用などに姿を変えるが、展示車にはモトクロッサーが積まれていた。「MUD MASTER-C」が自転車でこちらがバイクというのも、なんだか申し合わせたようで楽しい。
これら、道を選ばずどこでもモノを運べるクルマは、いかにも男の道具といった魅力がある。自分にとって使い途がなくても、つい足を止めて眺めてしまうものだ。なにより、この両モデルの素晴らしい点は、カンガルーバーを装備していないことにある。
日産の「NV200」は少し大きめなワンボックスサイズ。ビジネス・プロフェッショナルがコンセプトということで、プロ用の機材や装備を収納できるようカスタマイズされている。ポイントは荷室がスライドし、その後の空間をオフィスなどとして利用できること。キャンピングカーのような考え方だ。しかしここで寝てしまうと、後ろの機材が盗まれてしまいそうだが……。
軽自動車はかわいいだけじゃない
荷物というわけではないが、ダイハツはブースに福祉車両を展示していた。商用車エリア には福祉車両も多いが、この乗用車エリアではめずらしい展示だ。参考出品車の「タント ウエルカムシート」は、市販予定の新型「タント」をベースにしたもの。新型タントはセンターピラーレス構造のため、ワイドな開口部が確保できる。これを利用してシートリフト機構を組み込み、ラクな姿勢での乗降を可能とした。
「アトレー スローパー」はこの11月に市販されるモデル。リヤゲートから車イスごと乗り込める構造だが、運転席後部に引き上げ用のウインチを装備し、らくにスロープが上れるよう、工夫されている。車イスに乗ったまま操作できる。
「OFC-1」は、ダイハツ「コペン」の次のモデルのように見えるが、そんな単純な話ではなく、コペンの次を探るリサーチモデルだという。コペンよりずいぶんスポーティな方向に振られている。ベース車両は、昨年末にフルモデルチェンジした新しい「ミラ」。
「HSC (Heart & Smile Concept)」はコンセプトモデル。現実的な技術で環境にできるだけ優しくしながら、十分な室内空間、高い安全性を確保したモデルだという。センターピラーレス構造や段差をなくしたフラットフロアも特長。空気抵抗をCd値0.28とし、現実的なパワーユニットで33km/Lの低燃費を実現した。
ハイパワー車もたくさん登場した、が
ビー・エム・ダブリューは、世界初公開モデルとして「BMW コンセプト 1シリーズ tii」を展示した。これは1シリーズクーペのボディに、3L 直列6気筒+ツインターボのエンジンを押し込んだもの。いわゆる"羊の皮をかぶった狼"を仕立てる昔ながらの手法だ。メーカーは、いにしえの「BMW 2002」をイメージしているという。
「BMW コンセプトCS」はラグジュアリー・グランツーリスモの提案で、4ドアながらクーペスタイルをとる。極端に低いルーフ、長いボディが特長。全長は7シリーズより長い5106mm、全幅も2メートル近くある。背の低いクーペボディに4枚ドアとなると、かつて日本でヒットした「カリーナED」を思い出す。
アウディは日本でも発売が始まった「Audi R8」を展示した。多くの人にとって実物を目にするのは初めてのはず。水冷V型8気筒4.2Lエンジンをシート背後に搭載するミッドシップ。アウディ得意のクワトロシステムで4輪を駆動する。最高出力は309kW(420ps)だ。スタイルは同社のTTシリーズなどに比べると極めてオーソドックス。スポーツカーとしての性能を得つつも、日常的な使い勝手も重視しているという。
メルセデス・ベンツは「SLR マクラーレン ロードスター」を展示。イギリス・マクラーレン社と共同開発したSLRマクラーレンは2004年から世に出ているが、このモデルはルーフをセミオートマチックのソフトトップとし、オープンでも走行できるようにしたもの。ルーフの開閉は約10秒。エンジンは460kW(626ps)の5.5L スーパーチャージャー付きV8エンジン。改めて平べったいボディを見ると、モーターショーの常連でもある光岡自動車の「オロチ」によく似ている。
常連といえば、会場のコンコース(中央モール)には「グランツーリスモ」の試遊台が、いつものように並べている。「NISSAN GT-R」のプレスブリーフィングに合わせ、グランツーリスモにもGT-Rが登場するという念の入れようだった。すでにこの試遊台も東京モーターショーの名物になりつつあるようだ。