NTTドコモ代表取締役社長の中村維夫氏

NTTドコモは、2007年度中間期(2007年4-9月)の連結決算を発表した、売上高は対前年同期比2.4%減の2兆3,251億円、営業利益は同21%減の4,085億円、税引前利益は同21%減の4,109億円、当期純利益は同20.4%減の2,465億円で、減収減益となった。各種割引制度による減収とともに、携帯電話番号ポータビリティー制度(MNP)によるユーザー転出が続き、契約純増数伸び悩みによる携帯電話収入減が影響した。同社ではこれにより、今年度通期の業績予想のうち、売上高を下方修正した。

今年度上期のARPU(1端末あたりの月間平均収入)は総合で同3.8%減の6,550円、音声ARPUは同9.1%減の4,390円だったが、パケットARPUは同9.1%増の2,160円となっている。また、基地局数の整備などの設備投資、広告宣伝の前倒し、減価償却費の167億円増加などにより、営業費用が前年同期比501億円増加した。さらに、「ファミ割MAX」「ひとりでも割50」「オフィス割MAX50」といった新たな割引きサービスの人気が高く、これらの契約数は10月24日で1,310万に達し、当初見込んでいた年度末累計数の1,200万をすでに上回っており、同社では通期予想を1,900万に引き上げた。このため、割引による減収分は600億円に拡大する見込み(当初予想は400億円)となった。

同社ではこれらの状況を考慮して、4月に発表した通期の業績予想を見直し、売上高は4兆7,280億円を4兆6,670億円に、携帯電話収入は4兆1,180億円を4兆600億円に修正した。ただ、営業利益は7,800億円と、期初予想値を据え置いた。これについて同社の中村維夫社長は「新しい割引きサービスが好評で減収分が200億円増えるが、(端末代が高くなる代わりに基本使用料が安くなる「バリューコース」など)新たな販売プランを開始するため、代理店手数料が減り、厚生年金基金の代行返上益もありカバーできる」と話している。また、この中間期の営業利益の、通期目標に対する進捗率は52.4%であることも、下方修正しなかったことの根拠といえる。

MNPでの転出、契約純増伸び悩みで厳しい中間決算となった

販売奨励金モデルを廃する方向を推奨、地域ドコモは中央に統合へ

2007年度上期、同社の市場シェアは53.3%で、前年同期比2.2ポイント減少している。解約率は0.90%となり、同じく0.28ポイント上昇している。純増シェアは12.9%だが、第2四半期(2007年7-9月)だけで見ると7.9%だ。この2年ほどを振り返ると、2005年度から2006年度上期まで同社は常に、40%台の首位を巡りKDDIとの間で抜きつ抜かれつの激戦を続けてきた。それが、MNPが始まった2006年度下期以降一変した。この時期には、それまで蚊帳の外だったソフトバンクモバイル(2006年4月まではボーダフォン)の後塵を拝し、2007年度に入ってからは、KDDIと首位争いをしているのはソフトバンクだ。

中村社長は「MNP以降厳しい状況だが、11月に投入する905iシリーズは、ほとんどすべての機能を盛り込んでいるし、新しい料金プランも始まる。シェア回復に努力したい」と語る。いわゆる販売奨励金形式を廃した「バリューコ-ス」と、おおむね現行と同様の「ベーシックコース」(これらの詳細は別記事参照)だ。同社は「軸足はバリューコースに置く」(中村社長)意向で、新制度が適用される905iシリーズ以降、端末購入者の5割以上は同コースが占めることを想定している。

「バリューコース」に重点を置くのは「時代が大きく変わった。総務省のモバイルビジネス研究会でも論議されたが、ひとつの端末を長く使うユーザーが損で、頻繁に買い換える層が得だというのは、不公平だと認識している。携帯電話の成長期とは異なる成熟期には、それに適したモデルにすべき」(同)だからだという。中村社長は「バリューコースは、移行しやすいかたちにしているつもりだ」と話す。

「ベーシックコース」での端末価格からの割引額は1万5,750円で、すでに同様の制度を打ち出しているKDDIの「au買い方セレクト」でこれに相当する割引額の2万1,000円より低い。さらに「バリューコース」は端末を割賦で購入することもでき、KDDIと比べて、なるべく非奨励金型に誘導したいとの意向がここにも示されている。905iシリーズは「新しい技術をすべて搭載していく」(同)端末であり、あまり買換えをしなくても済むものであると同社ではみているようだ。これも「バリューコース」の追い風になる。「バリューコース」の比率が高くなれば、販売手数料はさらに減っていく。

決算発表会終了後、「バリューコース」の意図などについて報道陣からの質問に答える中村社長

また同社は、現行では同社とともに北海道から九州までの地域ドコモ8社による体制で事業を運営しているが、2008年度第2四半期をめどに、これら地域会社をドコモ本体に統合、全国1社の事業運営体制に改めると発表した。その背景については「この15年間、携帯電話の拡張期には、(地域ごとに)9社に分かれ、ユーザーに近いところでさまざまな決定をしていたのが、ユーザーに有利だった。いまでは、ネットワークの地域間不均衡という問題もある。均一なネットワークにしなけらばならない。効率化のためにも。統合化がよいのではないか」(同)と説明している。

ただ、この統合には2段階あり、まず各ドコモの1社への統合を行い、その次に、サービスやサポートを担う業務委託子会社との関係を改変しようと考えている。中村社長は「まず統合で、間接要員は相当省ける」としているが、「効率化」の効果は、これら子会社との関連見直しで、より大きくなるとみている。これもコスト削減への期待をにじませている。

今回の2つの発表からは、同社が以前にもまして、コスト削減重視をさらに強くしている姿勢がうかがわれる。