在日の若者のリアルな姿を描き、数々の映画賞を総なめにした『パッチギ!』の続編である『パッチギ! LOVE&PEACE』。このDVDがついに10月26日に発売された。これを記念して、東京・新宿の紀伊国書店にて、井筒和幸監督と、主演の井坂俊哉、中村ゆりを招いたトークショーが行われた。
当日は、激しい雨が降るあいにくの天気。それでも、この作品を愛する多数のファンで会場は立ち見が出るほどの大盛況。司会者に紹介され、井筒監督を筆頭に井坂俊哉と中村ゆりが登場すると、会場は大きな拍手に包まれた。
まずは、雨の中集まった観客に対して、礼儀正しく井坂俊哉が感謝の気持ちを述べる。冒頭、口数の少なかった井筒監督だが、現在韓国で公開中の『パッチギ! LOVE&PEACE』に対する韓国での反応を司会者に訊かれると、おなじみの井筒節が炸裂! 「日本ように変な反応はいっさいなく、よく作品を理解してくれた。反日がどうこうとか、こちらは作品に対するおかしなバッシングをする輩が多かったから」と強い口調で語った。
また日韓での作品の宣伝活動についても触れ、「韓国では連日インタビューをたくさん受けた」と井筒監督が語れば、全国の試写会で1万人握手キャンペーンに挑んだ井坂は、「最初は1万人も握手できるか不安だったが、沢山の人と握手して直接作品の感想を聞けて嬉しかった」と語った。
またDVDのメイキングなどの特典映像について訊ねられた中村ゆりは「撮影前半の方は、自分も慣れていなくて、メイキングを見ると焦っている感じが出ていて、今振り返ると面白いです。あと、アイドル風のグラビア撮影が入っているんですが、色々な衣装を着たりして、劇中同様にアイドルは大変だなと感じました」と語った。
井筒監督は「ふつうの映画DVDのメイキングだと、ただ楽しげなしょうもない撮影風景とかが入っているけど、この作品は違う。きつい撮影で逃げ出したいという状況の時は、そういう現場の厳しい様子がそのまま入っている。特に、アンソンの父親たちが戦場から逃げ続ける一連のシーンの撮影は、本当にこちらが逃げ出したいと思うほど大変やった」と撮影時の状況を振り返る。
激しい戦争シーンが描かれる『パッチギ! LOVE&PEACE』だが、こういった派手なシーンの演出経験の有無を不用意に尋ねた司会者に対して、「バカな事聞くな! あるに決まってるやないか。30年も映画撮ってるんやぞ!」怒りの井筒節が炸裂。やや会場に緊張した空気が流れた。
最後にファンに対して、「1作目より深い作品になっているので、是非観てください。もう、賞獲りレースには参加できないほど、過激で突き抜けた作品ですから」と強い口調で語った井筒監督。
記念撮影では「今日のイベントはどうせ取材しても、亀田問題でほとんど紹介されないやろ」と語り、報道陣の笑いを誘った。そこで、油断した記者のひとりがすかさず「沢尻エリカさんの騒動ですが……」と質問。やはり、前作『パッチギ!』でヒロインを演じブレイクした彼女の現在の状況に関して、監督のコメントを欲しがるマスコミは多いようだ。そこで再び激しく怒る井筒監督。「アホか! なんでここで沢尻の事を話すんや!」と質問した記者を怒鳴り会場を後にした。
失礼な質問や、関係ない話には怒る姿を見せ、周囲をハラハラさせた井筒監督だが、『パッチギ! LOVE&PEACE』に対する深い思い入れは、語る言葉の随所から伝わってきた。また、井筒監督の怒りには慣れているのか、焦る司会者とは対照的に、若い主演の二人は完全にイベントの最後まで平静だった。その様子からは、井筒監督に対するふたりの深い信頼も伺えた。井筒作品や監督のキャラクター同様に、怒りながらも熱く真剣なトークショーだった。