モーターショーの花形といえばやはり、SF映画から抜け出てきたかのような先進的なデザインのコンセプトカーだ。こうしたコンセプトモデルは見ているだけでも楽しい。このままの形で市販される可能性は低いが、過去にはこうしたコンセプトカーが現実的な姿となって市販されたこともあり、将来発売されるモデルのスタディケースといった意味合いも強い。ここではそんなスタイリッシュなコンセプトカーを紹介しよう。

マツダ 「気」(TAIKI)

流れるようなデザインの「Nagare」シリーズ

マツダは自然の流れをイメージした一連のデザインコンセプトモデル「Nagare」シリーズの第4弾として、「気」(TAIKI)を展示した。このモデルでは躍動感、力強さ、張り出し感を表しているという。「気」は2006年11月に発表された「流」(NAGARE)から「流雅」(RYUGA)、「葉風」(HAKAZE)に続く4作目。ガルウイングドアに続く後部のくびれた独特のデザインは天女の羽衣2枚を合わせた形状、室内は吹き流しの鯉のぼりを意識してデザインしたという。この形状は偶然にも非常に空力性能がよく、Cd値は0.25とのこと。こんなクルマが登場したら楽しいが、あくまでスタイルのスタディモデル。なお、「流」 「流雅」 「葉風」 は、海外ではすでに発表されているが、国内で公開されるのは初めて。また「葉風」は「流」をイタリアでデザインしなおしたもので、似た外観を持つ。「流雅」は、同じコンセプトながらSUV風の外観となった。

非常に先鋭的なデザインの「気」(TAIKI)

曲面を多用したガルウイングドアを開けると確かに羽衣という気がしないでもない

3つのパーツで円を構成するステアリングや、ヘッドレストの形状も面白い

リヤタイヤは左右からカバーで覆われており、空力性能の向上に貢献していそうだ

「流」。2006年11月のロサンゼルスモーターショーに出展された

「流」のリアビュー。非常にすっきりしたデザインだ

「流雅」。「流」のデザインを発展させたモデル。本年1月のデトロイトモーターショーに出品。基本的なシルエットは「流」と同じ

「流雅」。大型のガルウイングドアで後席にも直接乗り込める

「流雅」。テール部分はボディとは別の異なる色になる

「葉風」。3月のジュネーブモーターショーに出品。止まっている時でも風を切ったようなデザインとしている

「葉風」。重厚感はあるが、テールデザインは「流」に似ている

トヨタは「トヨタ」「レクサス」両ブランドのスポーツモデルを展示

トヨタは、2005年から「レクサス LF-A」を出品しているが、今回は1月に開催されたデトロイトモーターショーに出品されたものを展示した。デザインは2005年の直線の多いイメージから一転、曲面を多用したものになっている。LF-Aはすでに発売が終了した「スープラ」の後継といわれ、V10エンジンをFRレイアウトで搭載したレクサスブランドのプレミアム2シータースポーツという位置づけ。ただ、現在のデザインを見ると、まだ市販モデルまでは遠そうだ。

V10エンジンを搭載した「LF-A」。2005年出品時と比べると曲線の多いデザインに変更されている

スーパーカーらしいデザインのリアビュー

コンセプトモデルにしてはインパネまわりのデザインはオーソドックス

これは2005年東京モーターショー出展時の「LF-A」

トヨタブランドではハイブリッドの「FT-HS」も出品している。V型6気筒3.5Lエンジンにハイブリッドシステムを組み合わせたFR駆動のスポーツカーだ。エッジの立った非常にシャープなデザインで、見るからに速そうだ。現在のトヨタブランドにはスポーツモデルというカテゴリーそのものがなくなってしまったので、早くの登場を期待したいところだ。

フロントマスクが非常に特徴的な「LF-A」

リアはディフューザーも備え、マフラーは4本出しとなっている

ホンダ、ハイブリッドライトウェイトスポーツカーを世界初公開

ホンダが初公開した「CR-Z」は、その名前からもデザインからも1991年に販売が終了した「CR-X」を連想させる。名称は「Compact Renaissance ZERO」の略。一見ただのショーモデルに見えるが、ホンダの福井社長は早期の市販化を目指すという発言をしており、急激に現実味を帯びてきた。展示されていたショーモデルはタイプRの専用色といってもいいチャンピオンシップホワイトにパールコートをかけているとのことで、表面にうっすら虹色が垣間見える。ブレーキキャリパーはブレンボで、チャンピオンシップホワイトのボディカラーとの組み合わせは、タイプRの登場をも期待させる。なお、今回のモーターショーではNSX後継モデルの参考出品も期待されたが、残念ながら関連する出品はないようだ。

フロント部分に巨大な開口部とLEDヘッドライトを備えるCR-Z

リア中央部は透明素材になっており、CR-Xを彷彿とさせる

三菱、ランエボ顔のコンパクトSUVとプレミアセダン

「Concept cX」は9月に開催されたフランクフルトモーターショーに出品されたモデル。1.8L直4の次世代クリーンディーゼルエンジンを搭載した4ドアコンパクトSUVだ。リアハッチは上下に分割して開くタイプで、下側ドアはオープン後長さを延長してその上に座ることもできるようにするという。このまま市販されることはなさそうだが、コンパクトSUVというコンセプトは日の目を見る可能性が高い。

ランエボに似たフロントマスクを持つConcept cX

インパネは見るからにショーモデルぜんとしたハデなもの

Concept cXリアビュー

リアゲートは上下分割式で、下側は延長して台のようになる

市販車に近いデザインで思わず見過ごしそうになってしまったのが、実は世界初公開のプレミアムサルーン「Concept ZT」。エンジンはこちらもクリーンディーゼルだが、排気量は2.2Lとなる。デザインについてはクルマとしての美しい形にし、格式や威厳を感じるデザインにした結果こうなったとのことで、重厚感と。フロントマスクはややランエボに似ているが、前面の角度などが細かく変更されている。トランスミッションはランエボにも採用されている「Twin Clutch SST」が搭載される。

全体に落ち着いた雰囲気のある「Concept ZT」。まるで市販モデルのようなシルエット

「Concept ZT」リアビュー。このまま待ちを走っていてもおかしくないデザインだ

若者にクルマの新しい楽しさを訴える日産「RD/BX」

「RD/BX(ウンドボックス)」は若者に移動の楽しさを提供するというコンセプト。ラウンドボックスとは、角の取れた四角い形状という意味。若い世代にヒアリングを行ったところ、"危ないことはしたくい"が"いろいろ体験したい"という指向があり、"友人は上下関係がなく全てフラットなつきあい" "携帯でコミュニケーションする"という特徴などをクルマ造りに反映し、スポーツバーのようなイメージで内装をデザインしたという。その結果、フェンダーを逞しくしてタイヤを大きくして力強さを協調し、シートの座面はベンチシートで、4席全てを同じ形状に。また、ドア下部にはロードサーフェスウィンドウと呼ばれる窓を設けて視覚的なスピード感を味わえるようにしている。

「RD/BX」。ボディ下部がふくらんで力強さを表している

シートは座面のみが便利形状だが、バックレスとは独立した構造で4座全てが同形状

ドア下部にロードサーフェスウィンドウが設けられる

スズキ、プレミアムクロスオーバー「Kizashi2」

スズキは9月に開催されたフランクフルトモーターショーで「Concept Kizashi」を発表したばかりだが、東京モーターショーでは、車高を上げて走行範囲を広げたという「Kizashi2」を世界初公開した。現在スズキはヨーロッパで1.5Lの「SX4」を販売しているが、それを足がかりにもう1ステップ上のクラスを狙いたいという。そのスタディモデルが「Kizashi2」となるわけだ。そのデザインからヨーロッパ市場だけでなく、北米市場も強く意識しているようだ。全幅はショーモデルということでやや誇張されているが、全長4600mmはヨーロッパではそれほど大きくはないとのこと。

まるでアメ車のような重厚なイメージの「Kizashi2」

小さなウィンドウと、ショーモデルならではの超大径ホイールとタイヤが重厚さを強調している

プジョー、市販間近のデザインコンセプトモデル「308RCZ」

プジョーブースでは、フランクフルトモーターショーで発表されたプジョー308をベースにした2ドアクーペコンセプトカーを出品している。ルーフがカーボン素材になっているほか、インテリアはシート地に穴のあいたデザインが施されたバケットシートを採用するなど、独自のデザインとなっている。また、フェンダーはブリスター化され大径タイヤを装着、エキゾーストもセンター2本出しになるなど個性的なスタイリングになっている。ただし、このクルマはコンセプトカーといっても、ほぼこのままの形で市販される予定だという。

2ドアクーペの308RCZ。フェンダーの張り出しやルーフ形状など、どことなくアウディTTを思い起こさせる

ルーフはカーボン製

シートはバケットタイプ。リアシートはあるが基本は2名乗車程度の広さのようだ