街に増殖しているハイブリッド車。ガソリンだけでなく電気も動力として使用するクルマだ。しかしハイブリッドは増えているが、純粋な電気自動車はまだゼロに近い。次世代電気自動車といわれる燃料電池車もまだまだだ。モーターショーでの電気関連モデルを集めてみた。
多岐にわたるハイブリッドモデル
現在のところ、ハイブリッド車といえばなんといってもトヨタ。続いてホンダ、欧州メーカーといったところだろうか。まったくハイブリッドをやっていないメーカーもある。というのも、ハイブリッド車はガソリン(一部ディーゼル)を燃料とするため、結局のところ燃費を良くするだけの装置といえなくもなく、そのためのコストアップや環境に対するダメージが無視できないからだ。しかし、ハイブリッドの技術が安定し、コストも抑えられてくるに従い、市民権を得、トヨタ・ホンダ以外のメーカーからも徐々に登場しつつある。
トヨタは、今回のモーターショーでもハイブリッドを主役のひとつに置いている。「クラウン ハイブリッド・コンセプト(CROWN HYBRID CONCEPT)」は、トヨタの伝統的な高級車クラウンにハイブリッドシステムを搭載したもの。低燃費によるCO2削減はもちろん、モーター駆動によって高級車に必要な静粛性も上がるという。また、クラウン ハイブリッド・コンセプトは、クラウンの次のモデルチェンジ用のボディを採用しているようだ。サイズは全長4870mm、全幅1795mm、全高1470mm。
トヨタの高級車ブランド「レクサス」では、ハイブリッドのSUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)として「レクサス LF-Xh」を出品した。4WDタイプのボディながら、極端に低いルーフ部がデザインの特長。V型6気筒ガソリンエンジンとモーターのハイブリッドシステムを搭載する。
BMWが展示した「Concept X6 ActiveHybrid」もSUVタイプのボディとハイブリッドシステムを組み合わせたモデル。「2モード・アクティブ・トランスミッション」を採用し、発進および低速走行用のモードと、高速走行用モードのそれぞれで最適な駆動トルクを生成するという。
シトロエンの「C.CUCTUS」はディーゼルエンジンとモーターを組み合わせたハイブリッド車だ。大径の17インチタイヤが目を引くが、これはスポーツ系のワイドタイヤではなく、ころがり抵抗を減らし、燃費を向上させるためにミシュランと共同開発したもの。燃費は約34.5km/Lと驚異的。環境のため、最高速を150km/hで制限するリミッターが付いているというから徹底している。全長4,200mm、全幅1,800mm、全高1,490mm、車両重量1,180kg。
ハイブリッドをさらに進化させた試みも見られた。ボルボの「リチャージ・コンセプト」は、同社のC30をベースにしたハイブリッド車だが、リチャージ、つまり家庭用コンセントからも充電できるのが特長だ。日本では「プラグイン・ハイブリッド」と呼ばれることが多いが、短距離ではあれば、ガソリンを全く使わず走行できる。「リチャージ・コンセプト」は、約100km程度、バッテリーのみで走行可能だという。また、4つのホイールそれぞれにモーターを内蔵したインホイールモーターを採用したのも特長だ。
さらにユニークなのは、アウディが公開した「メトロプロジェクト クワトロ」だ。1.4Lガソリンエンジン(TFSI)で前輪を駆動し、30kW(41ps)のモーターで後輪を駆動。両方を同時に使うことで4WDシステム、アウディのいう"クワトロ"システムを可能にする。0~400m加速7.8秒というスポーティさを持ちながら、燃費は約20.4km/Lを誇るという。もちろん市街地などではバッテリーのみでも走行できる。
ハイブリッドの普及は、電気モーターの威力も広くしらしめることになった。モーターは回転数にかかわらず高トルクを発生するため、特に低速域ではガソリン車では得られない走行性能を発揮する。速いのだ。このモーターのスポーツ性を全面に押し出したモデルも発表された。ホンダの「CR-Z」は"ハイブリッド・ライトウエイトスポーツ"。環境に対する負荷を抑えた上で、誰もが運転する楽しさを感じられるモデルだという。往年の「CR-X」を思い出すスタイルも魅力だ。
トヨタのハイブリッドFRスポーツ「FT-HS」もハイブリッドのスポーツモデル。こちらはライトウエイトというわけではなく、3.5LのV型6気筒エンジンを搭載し、400ps以上の最高出力を得るという。全長4,325mm、全幅1,860、全高1290mm。
また、ホンダは実際にレースに使われた「シビック ハイブリッド」のレース車両も展示している。ハイブリッドはレースでも使えるほどのパフォーマンスを発揮しているのだ。
コストとインフラで足踏みする電気自動車
ガソリンなどのエンジンを積まない、純粋な電気自動車はというと、技術的にはほぼ完成しているとしていいだろう。もともと電気自動車はバッテリーとモーター、制御回路があればいいわけで、通常のクルマよりもよっぽどシンプルにできる。設計の自由度も高い。問題はコストとインフラだ。
三菱自動車の「i MiEV」とスバルの「R1e」は、どちらも軽自動車をベースにした電気自動車で、東京電力を始めとした電力会社と共同開発を行なっている。東京電力はR1eに15分で80%を充電する急速充電器を開発しているが、これの普及はまだこれからといったところ。もうひとつは車両そのものの値段。「i MiEV」は200万円を切れたら市販されるということなので、現在はまだそれ以上のコストがかかると考えられる。
家庭用電力を使い、夜間など駐車中に充電する方法も使われている。三菱自動車が展示した「i MiEV スポーツ」は急速充電と家庭用電源の両方が使えるコンパクトな電気自動車。アルミフレームを使って軽量化(車重970kg)。そのぶんバッテリーを多く搭載し、フル充電で200kmの走行を可能にしている。運転席が前進した(キャブフォワード)のデザインも可愛らしくていい。
スバルの「G4e コンセプト」も家庭用電源が使えるコンパクトな電気自動車。バッテリーにはスバルが独自に開発した次世代リチウムイオンバッテリーを使用している。走行可能距離は約200km。急速充電では80%まで15分で充電でき、家庭用電源では約8時間で100%充電となる。この場合の電気代はガソリン代に比べて約1/3だが、深夜電力を使えば約1/10まで下げられるという。
近い将来、クルマまで電気を使うようになると、電力の供給が心配になる。そのあたりを東電のスタッフに聞いてみたが、「この夏は大変ご迷惑をおかけして申しわけありませんでした。電気自動車の充電は主に深夜が考えられますので、大丈夫だと思います」とのことだった。
燃料電池はまだ開発中
次世代電気自動車の主役といわれている燃料電池車は、まだ開発中のようだ。各展示会やテレビコマーシャルでおなじみのホンダ「FCX コンセプト」は、今回のモーターショーでも公開されているが、近々さらに市販モデルに近いものが登場するという噂である。
またトヨタブースでは、つい先日、大阪~東京間の約560kmを水素補充することなく完走した「トヨタFCHV」が展示されている。燃料電池「トヨタFCスタック」の改良と制御システムを見直しで、約25%の燃費向上を実現。さらに70MPaの高圧水素タンクを開発し、従来の35MPaタンクに比べて水素貯蔵量を約2倍に増加させたことで、航続距離は約780km(トヨタ測定値)を達成したという。