若手お笑い芸人の登竜門「平成19年度NHK新人演芸大賞」が、大阪・NHK大阪ホールで行われ、コントや漫才を競う「演芸部門」の大賞が吉本興業所属のコンビ・ジャルジャルに決定した。
1991年にスタートし、爆笑問題、2丁拳銃、友近、麒麟など多くのお笑いスターを輩出してきた「NHK新人演芸大賞」。東京と大阪で行われた今年の予選会には268組の若手が挑戦し、激戦を勝ち抜いたアジアン、オリエンタルラジオ、THE GEESE、ジャルジャル、天竺鼠、のろし、安井順平、我が家(以上、50音順)の8組(関東勢4組、関西勢4組)が本選の舞台で火花を散らせた。
ステージに登場するなり、客席からひときわ大きな拍手が起こったのは、東のオリエンタルラジオと西のアジアン。バラエティー番組にCM、ドラマにと活躍の場を広げ、全国ネットの冠番組も持つ人気者・オリラジは、おなじみの"武勇伝"を封印し、新ネタの漫才で勝負。彼らの持ち味を生かしたエネルギッシュな動きのあるネタで、演技後には2人の息が上がるほどの熱演を見せた。一方、親しみやすいキャラクターで関西のバラエティー番組に引っ張りだこのアジアンは、本格しゃべくり漫才を披露。愛嬌あるルックスに似合わず、大阪のオバチャン並に? 腹の据わった馬場園の、毒のあるボケで会場を沸かせていた。
ほか、絶妙な言葉遊びをコントに取り入れたTHE GEESE、オフビート感のあるシュールなコントを演じた天竺鼠、パワフルな漫才ののろし、テープ音との掛け合いコントで笑わせた安井順平、3人漫才を斬新なスタイルで披露した我が家と、それぞれの個性を存分に発揮した熱演が続いたハイレベルな戦い。そんな中、強力なライバルたちを抑えて頂点に立ったジャルジャルのコントは、本人たちも「よう出来たコントやと思います」と胸を張る自信作。感覚をコチョコチョとくすぐるような細かいニュアンスのボケをしつこいほどに? たたみかけ、見る者を笑いのトリップ状態に陥らせる。このネタに「本気で笑わせてもらいました」とコメントした審査員の松尾貴史は「キミらアホやろ?(笑)」と、お笑い芸人にとって最高の賛辞を2人に贈っていた。
さて、そんな王者・ジャルジャルのプロフィールを簡単に紹介しよう。高校の同級生だった後藤淳平(23)と福徳秀介(24)が2003年に結成し現在、大阪の若手を中心とした劇場「baseよしもと」で活躍中。過去には、バッファロー吾郎が選考する、"独自の路線"と"芸人に対する愛の深さ"では恐らく日本一と思われるお笑い賞「BGO(バッファロー吾郎おもしろ)上方笑演芸大賞」で新人賞を獲得している(ちなみに、このときの大賞はケンドー・コバヤシ)。関西のコアなお笑いファン、そして笑いに飽くなき追究を続ける芸人仲間たちから、熱い支持を受けているコンビなのだ。
本選終了後に行われた記者会見で、受賞の喜びを語ったジャルジャル。これまでにも予選には挑戦していたが、本選に進むことができず、悔しい思いをしていたというだけに感激もひとしおという。以下は、受賞後に訊いた2人のコメント。
――まず、大賞を手にした感想は?
後藤 : ただうれしいです。大賞を獲ってみて、ニコニコするぐらいしかできないです。僕ら、何か受賞したっていうと、BGO上方笑演芸大賞以来ですから(笑)。
福徳 : あのときもらったトロフィーは中がスカスカですっごい軽かったんですけど、今回のは全然違いますよ。ホンマのトロフィーですよ!
後藤 : 中がギュッと詰まってます(笑)。
――受賞する自信はありましたか?
後藤・福徳 : ありました!
後藤 : 予選に通ったら、獲る自信はありました。ただ、予選に通るとは思ってなかった。
福徳 : 本選も、採点基準がキャラクター性とか将来性とか言われましたんで、一瞬、僕らで大丈夫かな? と思ってたんですけど、まぁなんとか獲れてよかったです。
――今日の勝因は?
後藤 : 今日やったネタがね、またようウケるネタなんですよ!
福徳 : 時間をかけて、かなり練りまくったネタなんで
後藤 : でも、ネタはまだまだほかにもありますよ。僕ら、こんなもんじゃないんで(笑)。
今回の受賞を機に、さらなる大きな飛躍が期待されるジャルジャル。まずは、12月上旬にNHK総合で放送される『平成19年度NHK新人演芸大賞 演芸部門』で本選の模様をチェックして、関西に多くの中毒患者を生んでいる彼らの不思議な笑いの世界に触れて欲しい。