第20回東京国際映画祭の特別招待作品となっている『自虐の詩』のイベントが22日、東京・六本木ヒルズアリーナで開催された。主演の中谷美紀をはじめ、阿部寛、遠藤憲一、堤幸彦監督などが出席、全員で劇中の"あの技"を披露した。
本作の舞台は大阪・通天閣近く。主人公、幸江(中谷美紀)は内縁の夫・イサオ(阿部寛)とともに小さなアパートで貧乏暮らしに耐えている。夫は無職で無口。些細なことで食事の乗ったちゃぶ台をひっくり返すような男だが、愛する人との生活は、不幸な少女時代を送った幸江にとっては幸せそのものだった。
そんなある日、幸江の妊娠がわかり、喜んでイサオに報告する。すると、男は黙って家を出ていってしまう。悲しみにくれる幸江は、身重の体で働き続け、歩道橋から転げ落ちてしまい……。
原作は業田良家の同名4コマ漫画。これをドラマ『ケイゾク』、『池袋ウエストゲートパーク(IWGP)』『TRICK』でおなじみの堤幸彦監督が映画化した。現在公開中の『包帯クラブ』に続く、今秋2本目の堤作品の登場で、ファンにとってはうれしい限り。"日本一泣ける4コマ漫画"が堤監督の手にかかり、どんな"泣ける"作品になっているのか、興味深いところだ。
この日のイベントはまず、安藤裕子が主題歌『海原の月』を歌ってスタート。会場が優しい雰囲気に包まれたところで、出演者、監督らが壇上に登場した。
中谷美紀は「パンチパーマの阿部さんに惚れながら演技をしました。パンチパーマの男性がこんなにチャーミングに見えるなんて、と思いました」と撮影時の感想を披露。
阿部寛は「何でも許してくれる奥さんがいて、現場で幸せな気持ちでした。(同時に)愛情を返すのが下手な役だったので悔しいと思って演じていました」とコメント。相手役の中谷が「かわいい」と評したパンチパーマについては、「(最初に見たとき)正直似合っているなと思ったんですよ」と答えた。
遠藤憲一は「(堤監督とは)IWGPが初めてで、いつも監督は、なかなかやれない役をぼくに振ってくれる。今回は中谷さんに最初は"キモかわいい"って言われてたんですけど、最後には"キモい"になってました(笑)」とエピソードを披露した。
深作監督作品以来の映画出演となるカルーセル麻紀は「普段着ないような色や普段着ない豹柄の服を着て、西成のおばちゃん役をやりました。この作品で、笑って泣いてください」とアピール。
主題歌を歌う安藤裕子は、「普通の営みの中で、心を暖めてくれるような作品です。どうぞ楽しんでください」。
堤監督は「(出演陣を見て)適材適所という言葉はこの映画のためにあるんだな、と。いつもできあがっても見直さないんですが、今回は見直しました。いい作品になってるなと思い、幸せなことだと思いました。これから寒くなりますが、一杯のシチューのような映画です」とコメントした。
最後に、この日の出演者全員で、本作の印象的なアクション"ちゃぶ台返し"を披露した。映画で何度も豪快なちゃぶ台返しを見せた阿部寛は「何も考えずに思いっきりやること」とアドバイス。観客の「あんたぁ~」の掛け声を合図に、特製の大きなちゃぶ台が宙を舞った。観客はその様子を見て大喜び。最高に盛り上がったところで、イベント終了となった。
『自虐の詩』は10月27日(土)より東京渋谷・シネクイントほかにて全国ロードショー。