SRI研究開発の内藤正登氏らの研究は、タイヤ材料に関するものである。タイヤはゴムの中にフィラーと呼ぶカーボンや硫黄などのナノ粒子を分散させて材料の特性を改善し、燃費の改善やグリップ性の改善を実現している。このような「補強効果」はフィラーの凝縮構造と変形時の凝縮構造の変化に起因すると考えられていたが、具体的にゴムの中でフィラーがどのように存在しているかについては明らかになっていなかったという。

内藤氏らは、放射光設備であるSpring-8を利用して、X線によるタイヤゴムの二次元散乱像の撮影に初めて成功した。そして、その二次元散乱像ができるためには、フィラーのナノ粒子がどのように分布していなければならないかという逆問題を解き、フィラーの3次元凝縮構造を特定している。

更に、構造解析プログラムにより、数百のフィラーを含むゴムの変形とフィラーの凝縮構造の変形をシミュレーションした。その結果、ゴムが伸びた場合にもフィラーの凝縮構造はあまり変形せず、その周囲のゴムが大きく変形することが判明し、この局所的な変形が「補強効果」の発現メカニズムの一因となっていることが分かったという。

引き続き、Spring-8とスパコンの組み合わせにより詳細な解析を行い、新材料創出のための知見を得ていくという。