海洋研究開発機構の島伸一郎氏らの研究は、超水滴法による雲形成と降雨現象の連結階層シミュレーションというタイトルで、その名の通り、雲が出来て雨が降るという現象をシミュレーションする。しかし、雲は1立方mあたり10億個程度という膨大な数の微小な水滴からなっており、個々の水滴を対象として計算を行うと膨大な計算量となってしまい、その計算はスパコンをもってしても現実的でない。
海洋研究開発機構の島氏らの超水滴法による雲形成のシミュレーション ESC/JAMSTEC。右下に水滴の大きさのカラーコードがあるが、雲の上部は白色の微小な水滴で、最下部は黄色からオレンジの大きな水滴で降雨が起こっている。 |
島氏らの工夫は、複数(微小な水滴では数千から数万個をまとめ、雨滴などの大きい水滴では1個単位のこともあるという)の大きさの揃った水滴を一纏めにして、超水滴として扱うようにした点である。これにより、計算量が大幅に減少し、現実的な時間で計算が可能になった。
銀河の衝突シミュレーションなどでも、遠方の星に関してはグループ化して重心に全質量が集まったという近似を行って計算量を減らしているが、超水滴法は、影響の少ない遠方の部分ではなく、作用を計算する対象そのものをグループ化している点が新奇である。
大きさの揃った水滴をグループ化しているので、蒸発や気流に対する運動に対しても、超水滴は個々の水滴と同様に振舞う。そして、島氏らの手法は、超水滴同士の衝突を定義しており、二つの超水滴がぶつかって大きな水滴ができるケースを取り扱うことが出来る。
但し、この方法によっても地球全体の雲をシミュレートするのは計算量の点で現実的ではなく、地球全体は従来の手法で解析を行い、異常気象などの注目すべき箇所だけをこの手法を使って詳細に解析するような使い方になるという。