一方、GT-X750の後継となるGT-X770は、フィルムスキャンに加えてドキュメントスキャン時の使い勝手も考慮した製品となっている。そのための大きな改良が、光源に白色LEDを採用したことだ。白色LEDは光源としてすぐに光量が安定するのでウォームアップにかかる時間が1秒程度。電源が投入されていればいつでもすぐにプレビューやスキャンをすることができる。ただ、白色LEDは、水銀蛍光ランプに比べて光量が少ない。そこで、これを補うためにCCDセンサの感度を高めることなどにより、従来製品と遜色ない性能を実現している。
GT-X970との違いは、最大光学解像度は6400dpiだがレンズは1本のみ。また、フィルムスキャンもブローニーまでで、フィルムスキャンユニットの光源は移動式ではない。インタフェースはUSB2.0のみ、画像のゴミやキズを自動的に補正するDIGITAL ICEもフィルムのみの対応となっている。逆にGT-X970にないものとして、オプションでオートドキュメントフィーダ「GT75ADF」(オープンプライス)が用意されていることだ。これは、ビジネスシーンでの使用も意識しているためだ。ちなみにスキャンドライバはGT-X970と同じEPSON Scan V3.2である。
スキャン結果から見る2機種の違い
GT-X970でフィルムスキャンを行ってみると、まずフィルムスキャナに迫るピントの良さに驚かされる。4×5や8×10フィルムは面積が大きく、フィルムが反っている場合スキャンしづらいが、GT-X970の4×5のフィルムフォルダは良くできていて、しっかりとフィルムを固定してくれる。8×10の場合はそのまま原稿台の上にフィルムを載せるのだが、ニュートンリングと呼ばれる同心円状の縞模様の発生もなくスムーズに読み取ることができた。
GT-X970のポジフィルムの読み取りは、色調が原稿に忠実で非常にクオリティが高い。細部のディテールもしっかり再現されており、プロ向けの画作りといえよう。また、ネガフィルムの読み取りでは、全体に以前よりもヌケがよくなった印象を受けた。特にスキャンサンプルでは肌色はスッキリとした色に仕上がっている。
一方、GT-X770では、フィルムフォルダはGT-X970よりも遥かに簡単な作りだ。また、スキャン結果を比較してみると、ポジフィルムの読み取りでGT-X970より若干色かぶりが強くなっていた。
そのほか、どちらの機種にもあるPDFの標準圧縮、高圧縮について調べてみた。A4の雑誌を400dpiの解像度で2ページ分を標準圧縮で保存した場合のファイルサイズは3MB。これが高圧縮になると644KBと約5分の1にまで小さくなった。画像を見てみると高圧縮したPDFファイルのほうが文字のエッジが粗くなっている。400dpiなので十分読めるが、解像度を下げるとルビなどが読みにくくなる可能性がありそうだ。
一方GT-X970のスキャンスピードは、速くなったと言えるかどうかは微妙だ。というのも通常の読み取りは結構速いのだが、DIGITAL ICEを使うとスキャン時間は一気に長くなる。読み取りにかかった時間は以下の通り。
●GT-X970のスキャン時間
- ウォームアップ:30~33秒
- プレビュー:30秒
●読み取り
- 4×5ポジ2枚(600dpi/画質優先):1分29秒
- 8×10ポジ1枚(600dpi/画質優先):1分31秒
- 6×6ネガ1コマ(600dpi/画質優先):28秒
- 35mmネガ1コマ(6400dpi/画質優先):1分47秒
●DIGITAL ICEオンの場合
- 6×6ネガ1コマ(600dpi/画質優先):5分
- 35mmネガ1コマ(6400dpi/画質優先):12分
DIGITAL ICEは非常に精度が高く、原寸よりも拡大して取り込むフィルムスキャンには必要な機能。とりわけストックしていたフィルムには不可欠だ。悩ましいところだが、DIGITAL ICEの効果を見れば使わない手はない。また、GT-X770の速度もなかなか速い。6×6ネガ1コマ(600dpi/画質優先)がGT-X970と同じ28秒。ウォームアップに1秒しかかからないことを考えれば、総合的な速さではGT-X970を凌ぐのではないだろうか。
(写真撮影:田中マサシ)