東京の杉並アニメーションミュージアムにて、8月28日よりマンガ家・赤塚不二夫の作品を展示した「赤塚不二夫と愉快な仲間たち これでいいのだニャロメ!展~『天才バカボン』『もーれつア太郎』40歳なのだ~」が開催されている。開館時間は10時から18時まで(17時30分まで入館可能。最終日は15時まで)。月曜日が休館日で、11月25日までの開催。入館無料。

展示会場へ入れば、バカボンのパパ像がお出迎え。今回は『天才バカボン』『もーれつア太郎』の2作品を中心に、多数の赤塚キャラクターに出会うことができる

赤塚氏は1956年のデビュー以来、『おそ松くん』『天才バカボン』など、多数の人気ギャグマンガを手掛けている。今回の展示会は『天才バカボン』『もーれつア太郎』が、40周年を迎えるにあたり開催されることとなった。ミュージアム内にあるアニメシアターでは、両作品のアニメ版を無料で上映。詳細な上映スケジュールは、ミュージアムのサイトより確認してほしい。

バカボンのパパの衣装を着た赤塚氏(左)や、多彩な表情を集めたパネル(右)もならぶ

表紙を飾った『週刊少年マガジン』『週刊少年サンデー』なども展示。数も多く、連載当時の人気をうかがい知ることができる

『天才バカボン』の複製原稿。左パネルは1972年の『週刊少年マガジン』33号に掲載された、『ウナギのイヌのカバやきなのだ』の回。右パネルには雑誌掲載時のトビラ絵と表紙がならぶ

ジオラマ作家・山本高樹氏が再現したトキワ荘。玄関にいるのは寺田ヒロオ氏(右)と、藤子不二雄(A)氏(左)。窓から見えるのは原稿を描く藤子・F・不二雄氏。左で愛車のバイクに乗っているのは、つのだじろう氏

『もーれつア太郎』のグッズも展示。ア太郎はもとより、ニャロメやケムンパスなど人気キャラが多い本作だけに、オモチャ、人形、キーホルダーなど、多彩なグッズがならんだ

9月29日には「スタジオ・ゼロ制作の幻のアニメなのだ」と題し、アニメ『おじゃる丸』を監督する大地丙太郎氏と、手塚治虫氏ら有名マンガ家が住んだ、トキワ荘の出身である鈴木伸一館長のトークイベントが行われた。鈴木館長はトキワ荘出身者で設立したアニメ制作会社スタジオ・ゼロの代表であり、『おそ松くん』(1966年放送)や『パーマン』(1967年放送)などのアニメ制作に携わった。また『オバケのQ太郎』などに登場する、「ラーメン大好き小池さん」のモデルとなった人物でもある。

今回のイベントでは、1970年から放送された歌謡バラエティ番組用にスタジオ・ゼロが制作した、アニメ「おたのしみアニメ劇場」の一部を上映。映像では和田アキ子さんの歌にのせてバカボンのパパがアニメーションするなどし、会場からは終始大きな笑いが起きていた。「おたのしみアニメ劇場」用には26本のアニメが制作されたが、ビデオ化やDVD化がされていないため、今回の上映は貴重な機会となった。

大地丙太郎監督(左)と、鈴木伸一館長(右)。映画『パーマン バードマンがやってきた!』の監督を、鈴木館長が務めたときの撮影監督が大地監督。また『おじゃる丸』で、オープニングの絵コンテを描いたのが鈴木館長

大地監督は赤塚作品について「小学校2年のときの廃品回収で『おそ松くん』に出会って『これだ!』と思いました。最初にレベルの高いものに出会ったので、それ以降ぬるいギャグは笑えなくなってしまいました(笑)」と思い出を振り返った。鈴木館長は赤塚氏のマンガについて「ギャグだけで笑えるのは本当にすごい。赤塚氏を超えるギャグマンガ家はそうそう出ない気がします」と語った。

赤塚作品では、『おそ松くん』が一番好きだという大地監督。「『おそ松くん』が、大地監督の原点かなと思っていました」という鈴木館長に「原点というかいまだに参考にしていますからね(笑)」と大地監督

そのほかトークでは、普段からどんなことにでも面白がって取り組む赤塚氏の考え方や、昔のアニメが持っていた動きのダイナミックさなど、多岐にわたってトークが行われた。最後に大地監督は「赤塚先生のギャグマンガの面白さに、一生かかって追いつきたいなと思っています」と語り、イベントを締めくくった。

会場内に置かれた赤塚氏へのメッセージノート。展示会開催から1カ月足らずで、すでに4冊目に達している

アニメ制作を無料で体験できるコーナーにも、赤塚キャラクターが登場。絵を描き写すトレース台を実際に使い、自分の手でキャラクターを描くことができる

今回の展示会では、男女関係なく20代、30代の比較的若い層が多く、原作よりアニメで赤塚作品に触れる機会が多かった年代の観客が、原稿やトキワ荘関連の展示物をじっくりと見ているのが印象的だった。これまで赤塚作品に触れたことのない人も、気軽に訪れてみてはいかがだろうか。