インテルは4日、報道関係者向けの定例会見を開催した。米Intelのショーン・マローニ主席副社長により、先月行なわれたIDF Fall 2007で紹介された技術情報を中心に、将来に向けた同社の最新動向が語られている。今回のキーワードは「プロセス・テクノロジ」と「モビリティ」だ。

米Intel主席副社長 兼 セールス&マーケティングの最高責任者であるショーン・マローニ氏

インテル代表取締役共同社長の吉田和正氏。オープニングに登壇しIDF Fall 2007のハイライトを紹介してくれた。ちなみに、マローニ氏は吉田氏の「ボス」だそうだ

マローニ氏は、「トランジスタがグローバル経済の大きな基盤になっている」と述べ、まずはその重要性を強調した。続いて、「トランジスタのヘルスチェックをしてみたい」とし、トランジスタの進化の歴史を紹介。そして現代、同社が最新の現行製品で採用する65nmプロセス世代のトランジスタにて直面した課題について言及した。

真空管の発明からはじまり……

ロバート・ノイスの集積回路まで。そして現在の65nmのシリコン・プロセス・テクノロジへと続く

IDF Fall 2007では、"ムーアの法則"の提唱者であるゴードン・ムーア氏が自ら、「ムーアの法則には限界がある」と説明していた。しかしムーア氏は、これまで、ある時点で"限界"とされていたポイントに直面しても、技術力でこれを突破し、"限界"とされるポイントをより先のポイントへとプッシュしてきたのだと話している。

IDF Fall 2007で催された特別講演の壇上、ムーアの法則には必ず終わりの日がくると話すゴードン・ムーア氏

65nmプロセス世代のトランジスタでは、すでにゲート絶縁膜の厚みが原子3~4個分程度しかなく、その薄さにより、リーク電流の問題がその先の進化に対する大きな障害となっていた。ここでもやはり、プロセスルールの微細化はもう"限界"にきたのだと言われていたのだという。だが、すでに知られているように、同社は45nmプロセス世代でHigh-Kゲート絶縁膜とメタルゲートを導入し、この問題を解決、性能の向上とリーク電流の削減を同時に実現した発表している。また同社は、このHigh-K/メタルゲートの技術により32nmプロセスのSRAMの動作試作品も完成させている。

65nmプロセスまでは、二酸化シリコンのゲート絶縁膜+ポリシリコンゲートという組み合わせ

45nmではハフニウムを利用したHigh-Kゲート絶縁膜と、さらにメタルゲートを導入

マローニ氏は会見中、45nmプロセスでのブレイクスルーを「トランジスタ史上最大の変革」とアピールした。このブレイクスルーにより、ムーアの法則に沿った進化の継続が実現できるという見通しがたち、あわせて、インテル・アーキテクチャの製品の魅力をより広範囲にわたり訴求できるようになるとも述べる。新しい製品は古い製品より常に優れ、業界のリーダーシップを維持する製品を定期的にリリースできると自信を覗かせる。

プロセス微細化とトランジスタ集積の継続を実現し、もうおなじみのTick-Tockモデルと呼ばれる製品投入サイクルを可能とした

次いでマローニ氏が強調したのがモビリティに関する進化についてである。現在の状況として、ノートブックPCの成長はとても力強いものであり、しかもこれは日本や欧米などの成熟市場に限った傾向ではなく、広く世界中で見られる傾向なのだという。同社のクライアント製品におけるノートブックPC向けの比率も年々伸びており、2009年にはデスクトップ向けを上回るだろうという予測も示された。

ノートブックPC市場の成長はこれからも順調に推移するという予測。それを支えるには新たなブレイクスルーが必要だろう

その市場において、同社はこれまでに1000万台の「Santa Rosa」プラットフォームを出荷してきたとされるが、次世代に登場する新たなモバイルプラットフォームが、WiMAX、HDビデオ、25Wの低消費電力を実現する「Montevina」である。

「Montevina」の最大のトピックはWiMAXだろう。初代CentrinoのWi-Fiに匹敵する重要な存在だとされる

その中でマローニ氏は、特にWiMAXについて、よりフラット・低コストで、しかし高パフォーマンスを提供し、通信速度あたりのコストを低下させるものだと紹介。モビリティの将来像はインテルアーキテクチャ+WiMAXであるという表現も打ち出している。マローニ氏は、「WiMAXは2008年には必ず主流になると考えている」と述べる。

2008年のメインストリームをアピールするが、例えば日本国内ではどの程度の需要があるのかなど、はっきりとは見えてこない部分もある

ユーザーが期待しているのはWebページ読込みの高速化であり、現在のモバイル機器ではインターネットをフル活用することは困難という状況にあって、ユーザーのモバイル環境に対する満足度は十分とは言えないのだという。日本のユーザーを例にすれば、携帯電話でのインターネットアクセスはリッチな体験を得ることができず、逆にデスクトップPCでは持ち歩けないことからインターネットアクセスの機会が失われると説明されるが、ではどうすればこの問題を解決できるのか?

同氏は、「PCに互換性のあるモバイル機器の実現が必要だ」とする。45nmプロセスの技術を使い、フルインターネットに対応したインテルアーキテクチャを"ポケットに入れる"ことでこの問題を解決できると語る。同社がそのために用意したのが「モバイル・インターネット・デバイス(MID)」や「UMPC」のための新たなモバイルプラットフォーム「Menlow」だ。

Menlowの基盤イメージ。このサイズでインテルアーキテクチャのプラットフォームを実現している

2008年に登場するとされるMenlowプラットフォームでは、2005年のモバイルプラットフォームとの比較で10倍という低消費電力と、さらに小型化されたサイズを実現しており、それでいてインテルアーキテクチャの高い処理性能も備えているとされる。

2009年からそれ以降にかけては、Menlowの次世代としてさらに10倍の低消費電力を達成するという「Moorestown」プラットフォームが控える。Moorestownは、45nmのCPUコアやグラフィックス機能などが組み込まれたSOCとコミュニケーションハブで構成されたプラットフォームで、コンポーネントサイズも既存のスマートフォンサイズが実現可能なほどに小型化する見込みであることが紹介されている。

MoorestownはSOC(System on Chip)によりさらなる小型化と低消費電力を目指す

こちらはIDF Fall 2007で披露されたMoorestownプラットフォーム搭載端末のモックアップ。ポケットにも余裕で入るサイズだ