本田技研工業は、二輪車用の新型オートマチックトランスミッション「油圧機械式無段変速機HFT(Human-Friendly Transmission)」を開発した。簡単な操作でゆったりとした乗り味とダイレクト感のある走行フィーリングを高次元で実現し、伝達効率にも優れるという。このHFTは、第40回東京モーターショーに市販予定車として公開される二輪車「DN-01」に搭載される。

油圧機械式無段変速機「HFT」

HFTが搭載される東京モーターショー出品予定車「DN-01」

このHFTは、油圧機械式無段変速機をホンダ独自の構造にすることで、二輪車に求められる軽量でコンパクトな形状を実現。また、「DN-01」ではライダーの要求に幅広く対応するため、一般走行をカバーする「Dモード」と、スポーツ走行を可能にする「Sモード」の、2種類のフルオートモードと、マニュアルミッション感覚の走行を可能にする「6速マニュアルモード」が選択できる。

HFTは10月26日から行なわれる第40回東京モーターショー出展モデル「DN-01」に搭載される。前回のモーターショーでも同モデルは出展されたが、詳細は明らかにされていなかった。また、HFTの開発は以前から行なわれており、1991年にはHFTを搭載したモトクロッサー「RC250MA」がモトクロス全日本選手権レース参戦2年目にしてシリーズチャンピオンを獲得している。

HFTはひとつのユニットで多彩な機能を持つ変速機で、ひとつの軸上に発進機能から動力伝達、変速機能まで備えている。基本構成はエンジンの動力を油圧に変換するオイルポンプと、その油圧を再度動力に変換して出力するオイルモーターからなり、それぞれ複数のピストンとディストリビューターバルブ、ピストンを作動させる斜板、出力軸と一体化されたシリンダーで構成され、これがHFT特有の構造となっている。また、油圧機械式無段変速機では世界初(ホンダ調べ)となるロックアップ機構を備え、巡航走行時には伝達効率のロスを最小限とすることで燃料消費率の向上にも寄与している。

HFTの構造や動力伝達の詳細については、同社の「FACTBOOK HFT」に詳しい。

HFTの構造。赤い部分はオイルポンプ、青い部分はオイルモーターを示す。それぞれ斜板とピストンを持ち、シリンダーにはピストン部分が組み込まれ、出力軸と一体化した構造となる。ポンプ斜板の傾きは固定され、モーター斜板の傾きは自在に変化する

動力の伝達。オイルポンプ側のピストンは斜板に沿って押し込まれる際に作動油を高圧で送り出す。動作油はポンプとモーターピストンを押す力になり、それぞれのピストンは斜板からの反力で下向きに働く力を受け、その力はシリンダーと一体化されている出力軸を回転させる力(トルク)になる

トルクの変化。トルクの大きさはモーター斜板の角度で変化する。モーター斜板の傾きが最大で出力トルクも最大になり、斜板の傾きが小さくなるに従い、出力トルクも小さくなる。特に斜板の傾きがない場合は、オイルモーター側からの出力トルクはなくなる

シフトコントロール。HFTは電子制御により変速する。「DN-01」では、一般走行用の「Dモード」、スポーツ走行用の「Sモード」のほか、マニュアルミッション感覚で変速できる「6速マニュアルモード」が用意される