Buzzword買収とオンライン戦略
Adobe MAX 2007での大きな話題の1つが、「Buzzword」を開発する米Virtual UbiquityのAdobeによる買収だ。前述のようにAdobeがAIRの技術デモを行った際、必ずといっていいほど登場したのがBuzzwordだ。BuzzwordはFlash技術をベースに作られたワープロソフトで、Microsoft Wordなどといった製品と同様の文書作成・編集機能をWebブラウザやAIR上で実現できる。
初日の基調講演では特に触れられなかったが、Adobeは同日にSHAREと呼ばれるサービスを発表している。Buzzwordなどを通して作成された文書ファイルをオンライン上で複数のユーザー同士でシェア(共有)することを可能にする。これにより、GoogleがGoogle Docs & Spreadsheetsで提供しているWebブラウザ上での文書・表計算ファイルの閲覧・編集のほか、複数ユーザーでのファイル共有といったサービスとほぼ同じような環境が利用できる。奇しくも、同日にあたる10月1日には米Microsoftも「Microsoft Office Live Workspace」と呼ばれるサービスのベータ版の提供を発表している。こちらも、Microsoft Officeの存在の有無に関わらず同製品で作成された文書ファイルをオンライン上で共有したり、Webブラウザを介して閲覧やコメントの付与を可能にする。
興味深いのは、各社がオンライン経由で手軽に利用できるワープロ/表計算ソフトを用意しつつ、作成したファイルのワークグループでの共有を実現している点にある。今回Adobeが用意したのはBuzzwordのみだが、前出のLynch氏によれば今後さらなる拡張は視野に入っているという。例えば、表計算ソフトの提供をはじめ、ワークフローや文書管理ソリューションとの連携なども考えられ、こうした強化を繰り返すことでAdobe内で完結するエコシステムが出来上がる。Adobeは文書フォーマットとしてPDFを抱えており、今後の展開しだいではMicrosoftやGoogleなどと並ぶ次世代オンライン戦争の台風の目になる可能性を秘めている。一方でIBMはODF(Open Document Format)に準拠した無償オフィススイート「Lotus Symphony」の提供開始を9月にアナウンスしており、次世代オフィス戦争の火花が早くも散りつつある。