三菱自動車は、4WDセダン「ランサーエボリューションX」を正式に発表、10月1日から発売する。エンジンは2L(リッター)DOHC、MIVEC(可変バルブ)ターボ。トランスミッションは6速自動変速が可能な「Twin Clutch SST」と5速MTが用意される。グレードはベースとなるGSRと、レースベース車のRS。さらにGSRには装着される装備別に5パッケージが用意される。価格はGSRが349万5,450円~424万4100円、RSが299万7,750円。
ランサーエボリューションXは、ハイパフォーマンスセダン「ランサーエボリューション」の10代目にあたる。2005年のデトロイトモーターショーでコンセプトカーが登場して以来、2年を経て正式発表となった。ベースとなるモデルが「ギャランフォルティス」に変更されたため、「ランサー」の名称がつくのはこのランサーエボリューションXのみ。
エンジンはギャランフォルティス搭載の4B11型2L DOHC16バルブ4気筒MIVECエンジンをベースに、チタンアルミ合金製タービンホイールを採用したターボチャージャーを組み合わせたもの。最大出力は前モデルと同等の280PSだが、全域での高出力化と、最大トルクを422Nm(43kgm/3500rpm)に向上しつつ、12kg軽量化した。また、吸排気連続可変バルブタイミング機構「MIVEC」により、出力アップと同時に排出ガス性能も向上し、平成17年度派出ガス50%低減レベル(☆☆☆)を達成している。エキゾーストマニホールドを車体後方となる後方排気レイアウトを採用したことで、排気効率を改善すると同時にエンジンを低く搭載して低重心化も実現したという。
トランスミッションは5速MTのほか、クラッチ操作が不要な新開発の6速自動マニュアルトランスミッション「Twin Clutch SST(Sports Shift Transmission)」も用意される(SGR)。奇数段と偶数段の2系統のクラッチを交互に切り替え、エンジンとの協調制御を行うことでトルクの途切れ感のない加速フィーリングを実現できるという。トルクコンバーターを使わず、クラッチで動力を伝達するため、動力損失がなく高い燃費性能も実現できる。変則動作はAT感覚で自動変速する「オートシフト」と、マニュアル感覚で操作できる「マニュアルシフト」が用意。さらにレバー脇のスイッチで変速タイミングやアクセルレスポンス等が異なる「Normal」「Sports」「S-Sports」の3モードに切り替えられる。また、ハンドルから手を離さずに変速できるマグネシウム製パドルシフトも標準装備される。
GSR、RSの両方に用意される5速MTも新しく開発されたもの。レースで培ったノウハウを注ぎ、新エンジンの性能に合わせて高いトルク容量を確保しながら、コンパクトさにも配慮されている。1速から5速のすべてにダブルシンクロ機構を採用し、スムーズなシフトチェンジと、メリハリのあるタッチのシフト感覚を実現。高い耐久性も確保したという。
4WDシステムには、三菱独自の車両運動統合制御システム「S-AWC(Super All Wheel Control)」を標準搭載した。S-AWCには従来のランサーエボリューションシリーズに搭載されていた「ACD(Active Center Differential)」「AYC(Active Yaw Control)」「スポーツABS」に、新たに「アクティブスタビリティコントロール(ASC)」を追加したシステム。制御モードには、乾いた舗装路向けの「TARMAC(ターマック)」、濡れた路面や未舗装路向けの「GRAVEL(グラベル)」、雪道向けの「SNOW(スノー)」を設定、路面状況に応じて各モードを選択できる。
ボディはギャランフォルティスをベースにしているが、先代の「ランサーエボリューションIX MR」に比べて曲げ剛性が約60%、ねじり剛性が約40%向上している。また、ワイドトレッド化、ロングホイールベース化により走行安定性と乗り心地も向上。低重心化やエンジンの軽量化、IX MR比約20mmのフロントオーバーハングの短縮、バッテリーのトランクルームへの移設などが行なわれた結果、前後重量配分が最適化され、ハンドリングの基本性能を高めたという。なお、軽量化や低重心化を狙い、ルーフ、エンジンフード、フロントフェンダー、リヤスポイラー骨格部にはアルミ素材が採用されている。
サスペンションは、マクファーソンストラット式をベースにレイアウトを一新し、各部品の取り付け部を高剛性化した。GSRには、ケンケイ製の高剛性18インチ鋳造アルミホイールを採用。ブレーキには、フロントが18インチ、リアが17インチのブレンボ製ベンチレーテッドディスクを採用した。GSRではさらに軽量なBBS製鍛造アルミホイールもメーカーオプションで用意される。また、「ハイパフォーマンスパッケージ」では、ビルシュタイン製ショックアブソーバーと、アイバッハ製スプリングを設定したほか、1個あたり1.3kgの軽量化されたブレンボ製2ピースフロントブレーキディスク、剛性やグリップ性能を高めたハイパフォーマンスタイヤを採用している。
フロントシートには、専用に開発されたレカロ製フルバケットシートを採用している。一般に「フルバケットシート」というとリクライニング機構を備えないものを指すが、ランサーエボリューションに採用されたものはリクライニング機構を備えた「セミバケットシート」タイプ。本革巻きステアリングホイールには、小径タイプを採用し、スポーク上にはS-AWCモード切り替えスイッチを備える(HDDナビ装着時にはシフトパネル上に移設)。また、「レザーコンビネーションインテリア」パッケージでは、本革とグランリュクス(スウェード調人工皮革)を採用したシートや、ドアトリム、フロアコンソールリッドなどを採用している。
エクステリアは、エンジンフード上にエンジンルームの熱を排出するエアアウトレットと、ターボチャージャー冷却用エアスクープを備える。GSRには、大型エアスポイラーを標準装備し、車体底面には空気の流れを考慮しながら駆動系の冷却も図っている。リヤバンパー下部はディフューザー形状として、床下の空気を効率よく排出し、外観のアクセントとしてもデザインされている。「スタイリッシュエクステリア」パッケージでは、フロントグリルやベルトラインのモールをメッキ化、フード、フェンダーのアウトレットをボディ同色にしたほか、フロントフォグランプが装着される。
なお、「ハイパフォーマンスパッケージ」「スタイリッシュエクステリア」「レザーコンビネーションインテリア」の全てに加え、BBS製鍛造18インチアルミホイールを装着した「プレミアムパッケージ」も用意される。
RSは、レースベース用に装備を簡略化し、車両重量を軽減したモデル。大型リヤスポイラーや18インチホイール、ブレンボ製ブレーキなどはオプションとなるほか、純正のチタンアルミ製ターボチャージャーに替わり、ニッケルベースの合金「インコネル」を採用したターボチャージャーも選択できる。また、リアには1.5WAYヘリカル機械式LSDを標準装備する。