大手GPUメーカーであるNVIDIAは9月25日、インテルプラットフォーム向けのグラフィック統合型チップセット「GeForce 7-Series for Intel」を発表した。今回リリースされたのは、開発コード名「MCP73」として知られたチップセットで、名前のとおりGeForce 7世代のグラフィックコアを内蔵。ノースブリッジとサウスブリッジが統合されたシングルチップ型で、下の3ラインナップを中心に市場投入される予定となっている。
GeForce 7 Series for Intelの最上位版となる「GeForce 7150/nForce 630i」。ノースブリッジとサウスブリッジが統合されたシングルチップ型となっており、省電力性も期待できそうだ |
チップセット名 | GeForce 7150/nForce 630i | GeForce 7100/nForce 630i | GeForce 7050/nForce 610i |
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対応CPU | Core 2ファミリー、Pentium D、Pentium 4、Celeron D | ||
対応ソケット | LGA775 | ||
対応FSB | 1333MHz | 1066MHz | |
対応メモリ | DDR2 800 | DDR2 667 | |
DirectX 9.0、Shader Model 3.0 | ○ | ○ | ○ |
HDMI | ○ | ○ | × |
HDCP | ○ | ○ | × |
DVI | ○ | ○ | × |
グラフィックコアクロック | 630MHz | 600MHz | 500MHz |
PCI Express | 1 x16、2 x1 | ||
SATA/PATA | 4/2 | ||
RAID | 0/1/0+1/5 | 0/1 | |
NVIDIA MediaShield | ○ | ○ | ○ |
LAN | 10/100/1000 | 10/100 | |
USB | 10ポート | 8ポート | |
マザーボードの想定価格レンジ | 70ドル | 60ドル | 50ドル |
インテルプラットフォーム向けのNVIDIA製統合型チップセットは、過去にXbox用に開発されたことはあるが、一般的なマザーボード用に投入されるのは初めてである。現在、インテルプラットフォーム向けのチップセットは本家インテルの独壇場。AMD(旧ATI)からも「ATI Radeon Xpress 1250」などがリリースされているものの、採用マザーボードは非常に少ない。パーツの選択肢が増える意味でも、新チップセットへの期待は大きい。
「GeForce 7150/nForce 630i」のブロック図。Gigabit EthernetやRAID、HD Audioなどの基本的な機能をきっちりと押さえているほか、HDCP対応のHDMIやDVI出力をサポートしているのが特徴となる |
GeForce 7150/nForce 630iに統合されたグラフィックコアは、GeForce 7世代ということもあり、DirectX 9.0のShader Model 3.0に対応。さらに、コンテンツ保護機能である"HDCP"をサポートする"HDMI"や"DVI"出力に対応するなど、最新チップセットとして必要な機能はきっちりと押さえている。FSBは1333MHzまでで、メモリはDDR2 800までの対応。DDR3メモリについてはサポートされていない。これまでのNVIDIA製チップセット同様、Gigabit EthernetやHD Audio、RAID機能など豊富な機能が搭載されている点もチェックしておきたいポイントだ。
NVIDIA製チップセットというと、かなり"アグレッシブ"な印象があるが、GeForce 7-Series for Intelは、かなりおとなしめの設計。残念な点として、NVIDIA独自の動画再生支援機能である「PureVideo」がサポートされていないこととメモリコントローラが"シングルチャンネル"のみの対応となっていることの2点が挙げられる。グラフィック統合型チップセットの場合、3Dグラフィック性能はもちろんだが、それ以上にリビングPCとしての動画再生能力が求められる。そういった点で、HDCPやHDMIのサポートは大きなアドバンテージとなるはずだ。しかし、PureVideoがサポートされていないため、これらの機能も場合によっては宝の持ち腐れとなりかねない。これについてNVIDIAは、「Blu-rayやHD DVDなどの次世代コンテンツを楽しむなら『GeForce 8-Series』のグラフィックカードを挿してほしい」としているが、マザーボード1枚で完結できるのが統合型チップセットの利点。次期チップセットでのサポートを期待したいところである。
また、メモリコントローラについてもNVIDIAは、「シングルチャンネルでVista Premiumのパフォーマンスが発揮できる性能を秘めている」としている。たしかに、メモリ1枚で十分な性能が引き出せれば、それだけコストの削減につながる。しかし、デュアルチャンネル全盛の時代にあってはどうしてもモノ足りなさを感じてしまうのではないだろうか。GeForce 7-Series for Intelに関しては、パフォーマンスよりもコスト重視の設計スタイルと考えてよいだろう。
GeForce 7150/nForce 630iを搭載したMSIの「P6NGM」。I/OパネルにはしっかりとHDMI端子が搭載されている。なお、Engineering Sample版のため、ベンチマークテストの結果は割愛するが、Windows Vistaをインストールしたところ、問題なくAeroが有効になった |
GeForce 7-Series for Intelに内蔵されているグラフィックコアの性能は、グラフィック統合型としてはかなり高いスペックとなっている。しかし、最新のPCゲームを高解像度でサクサクとプレイできるか、となるとやはり力不足な点は否定できない。ただし、現在3Dグラフィックはゲームだけでなく、Google EarthやAdobe Reader(PDF)、さらにSecond Lifeといった幅広いジャンルで利用されている。つまり、内蔵グラフィックといえども"映ればよい"という時代ではなくなってきているわけだ。GeForce 7-Series for Intelを搭載したマザーボードの価格は、最上位版でも70ドル程度と想定されており、かなり値ごろ感が高い。シングルチャンネルでも高い性能を発揮する点を考えれば、コストをできるだけ抑えてPCを組み上げたいというユーザーにとっては、新しい選択肢として歓迎できるチップセットといえそうだ。