発表資料には書かれていないが、スカラ部は富士通が担当と言われており、この文章は、同社のSPARC系列のスカラプロセッサをベースにスーパーコンピュータ向けに高性能化と省電力化を行ったプロセッサを開発すると読める。また、膨大な数のプロセッサを接続するために、「圧倒的なスケーラビリティ・高信頼性を持つ高性能インターコネクト」を開発し、相当な発熱となるスパコンを冷却するために、「高効率冷却システム」開発すると考えられる。

一方、ベクトル部は日本電気と日立製作所の連合軍が担当すると言われており、この文章からは、基本的な構造は、現在のSXシリーズのように制御用のスカラプロセッサにベクトルパイプライン型の演算アクセラレータを接続すると考えられる。そして、こちらには、「運用の自由度が高い接続構成で、省電力かつ超高速・広帯域の光インターコネクト」を採用すると書いてある。

スカラ部とベクトル部の使い分けの図で、ベクトル部には「全域的通信」と書かれていることから、ベクトル部は地球シミュレータと同様なクロスバなどの全域的な通信に適したインターコネクトが使われると推測できる。

一方、これを逆読みすると、富士通担当のスカラ部のインターコネクトは光ではなく電気で、また、使い分けの図で「隣接計算主体」と書かれていることから、トーラスなどの隣接通信に強いネットワークトポロジが用いられると推測される。なお、ベクトル部の光インターコネクトに関しては、「次世代スーパーコンピュータでは、1信号あたり20Gbpsの速度と、高密度実装化で超高速の伝送性能を目指す」と脚注に書かれている。

以上が発表資料から読み取れる次世代スーパーコンピュータの構成で、どのような構成になるのか、おぼろげにしか分からず、隔靴掻痒の感がある。しかし、良く見るとこの発表のタイトルは「構成を決定」であって、どういう構成であるかを発表するとは一言も言っていない。やはり、あまり早く手の内を明かしてしまうと米国に先を越されてしまう恐れもあり、故意におぼろげにしているものと思われる。また、スポンサーである国民に推理と謎解きの面白さを提供しようというサービス精神から、情報を小出しにして長く楽しんでもらおうという意図も含まれているのかも知れない。