MySQLが主催するアジア初のユーザカンファレンス「MySQL Users Conference Japan 2007」が今月11、12日に開催された。本誌は、それに際して来日したMySQL CEOのMarten Mickos氏と、MySQL Senior Vice President兼MySQL日本法人 代表取締役社長のLarry Stefonic氏に話を聞いた。GPLv3へのライセンス移行、MySQLとPostgreSQLとの違い、日本市場での戦略などについて明らかにされたので、ここで紹介したい。

OSSによるビジネスのポイント - コミュニティとの対等な付き合いは"透明性"が生み出す

MySQL CEOのMarten Mickos氏

「OSSでビジネスを展開するというのは前例がほとんどない新しい挑戦だった。ビジネスを展開するうえでは商品に訴求力が必要になる。しかし、OSSを絡める場合、訴求力がどんなに高くなるとしても、それがコミュニティを遠ざけることになるようであれば、採用してはならない。そう考えて選択を続けてきた」--MySQL CEOのMarten Mickos氏は起業当時をこのように振り返る。

Apache Software Foundationをはじめ、OSSを提供している団体は多くあるが、OSSを提供しつつそれをビジネスに結び付けて成功させた例は少ない。そんな中、MySQLはOSSとビジネスを両立させた数少ない企業の1つだ。

同社の最初の収益モデルはデュアルライセンスモデルである。通常のユーザーにはGPLの下に無償で提供するが、(販売用ソフトウェアに組み込むなどの目的で)GPL以外のライセンスで使用したいユーザーには、独自ライセンスを締結し、有償で提供するというものだ。

「デュアルライセンスモデルは、組み込みビジネスに対しても、幅広いコミュニティに対しても優れたモデルだ」と同氏は語る。MySQLでは、現在でもデュアルライセンスを使用している。もちろんデュアルライセンスモデルは完璧なモデルではないが、起業当初に利益をあげるには優れていたと考えているという。

コミュニティとうまくやっていくポイントは「透明性」だと同氏は説明する。ライセンスはどれを適用する、どのような開発体制をとる、どういった機能を盛り込んでいく、どういった方法で収益を得ていく--こうした点について詳細と今後の計画をはっきりと公開することがコミュニティと優れた関係を続けていくコツだと考えているという。

また、モデルがシンプルであるかことも重要だという。Mickos氏は「モデルそのものは祖母に対しても説明できるものでなければならない。ほかにも優れたモデルはあったが、複雑なものは採用していない」と話す。MySQLがコミュニティと良好な関係を築きながらも発展してきた背景には、「透明性」と「シンプル」というポリシーがあったわけだ。