火星文が、現代中国語における文字表現の発展に寄与するかもしれないという一部の意見に対し、専門家は、言語の革新と変化は「緩やかに雑物を捨て、精髄を取る過程であるべき」で、「このような"児戯"では到底それを実現することはできない」と主張する。

実際、近年日常生活にまで入り込んだ「新語」は、その大半が各分野の専門家レベルによる造語、あるいは科学技術研究の成果を反映するものだ。たとえば、「互聯網(インターネット)」などがそれだ。単なる文字ゲームに近い火星文が、伝統的な文字文化、使用習慣を揺るがせにできないことは自明の理、なのだ。

多くの専門家は、ネットワーク言語の想像力と創造力は中国語に新たな要素をもたらすかもしれないが、入力がきわめて容易で、短絡的な情緒表示を目的とする表記方法には、伝統的な中国語の「典雅」がない。その使用をこのまま放置しておけば、長期的に中国の青少年の文章表現力にマイナスの影響が出る恐れがあり、しかも、彼らの漢字運用力を著しく減退させる可能性すらあるとの懸念を表明している。

公文書や教科書での使用に制限

一部の報道では、いくつかの地方で、すでに国家機関の公文書、教科書などには現代中国語語彙や文法規範に符合しないネットワーク語彙を使ってはいけない、またニュース報道のなかでも、必要以外に現代中国語語彙や文法規範に符合しないネットワーク語彙を使ってはならないとの規定が出されているようだ。

中国で最も漢字収録数の多い字典には、12万もの漢字が載っている。しかし、中国人が常用している漢字はせいぜい4,000字に過ぎず、大学で古代漢語を研究している教授でさえ、おそらくは6,000字余りしか知らないが、通常のパソコンのGB2312漢字コードには約7,000の漢字が搭載され、備考文字集には2万余り、合わせれば3万余りの漢字が載せられていることになる。

文字の特徴は、使われなければ滅びていく、というところにある。ネットワーク世界で突如姿を現した火星文も一時的な現象で、環境が変われば淘汰され、本当に生き残れるものだけが「有用なもの」なのであろう。

社会的機能で盛衰が決まる

ネット利用者の中には、火星文は洪水か猛獣のようなもので、もともと規則正しい文字を文字化けのようにし、中国の文化環境をひどく乱していると見る者もいれば、ネットワーク世界におけるインタラクティブ・コミュニケーションを促進し、中国のネットユーザーに気軽なコミュニケーションツールを提供するので、決して無駄ではないと見る者もいる。

新しい事物が生まれるときには、必ずその社会的な源があるわけで、その新事物が先進的か後進的かはその形によって決まるものではなく、その社会的機能によって決まるもの、なのかもしれない。

いずれにせよ、現在の中国「新新人類」は、このような多くの人が見ても聞いても分からない火星文が死ぬほど好きなようだ。彼らは火星文がもたらしてくれる楽しみを享受するのが大好き、なのである。