9月11日、NVIDIAのチーフ・サイエンティストを務めるDavid Kirk博士が来日し、東京大学にてGPUを活用した並列コンピューティングについての講演を行った。
GPGPU向けコンピューティングモジュール「Tesla」シリーズを紹介
今回のKirk氏の講演の主題は「コンピュータグラフィックス」ではなく、グラフィックスプロセッサ(GPU)を活用した並列コンピューティングであった。
このためKirk氏がまず紹介したのは、GeForceでも、Quadroでもなく、この夏紹介したばかりの並列コンピューティングボックス「Tesla」であった。
Teslaは、GeForce 8800 GTX世代のGPU「G80」をGPGPU(General Purpose GPU)用途に転用した製品で、1Uラックマウントサーバー型の「GPU Computing Server Tesla S870」、ミニタワー型の「Deskside Supercomputer Tesla D870」、PCI Express接続のカード型の「GPU Computing Processor Tesla C870」の3タイプの製品群からなる。
1U型S870は4基、ボックス型のD870は2基、カード型のC870は1基のG80を搭載しており、なんとディスプレイコネクタは搭載されていない。つまり、GPUは搭載しているが、本当に汎用コンピューティング向けの製品なのだ。S870/D870は動作させるためには別体となるホストPCを用意する必要があり、これと外部PCI Expressケーブルにて接続する。一方、C870はマザーボード上のPCI Express x16(Gen 2対応)スロットと直接接続できるが、グラフィックス出力用に別のビデオカード(例:Quadroシリーズ)が必要になる。
昨年、SIGGRAPH 2006でNVIDIAはGeForce 7900(G71)ベースの外部GPUボックスの「Quadro Plex」シリーズを発表し、最近ではG80ベースのQuadro Plexも発表されているが、Teslaはある意味、このQudro PlexのGPGPUバージョンということができるかもしれない。
最も基本となるTesla C870のスペックも公開されたが、これを見る限り、ほぼGeForce 8800 GTXそのままということが分かる。
相違点はTesla C870のワークメモリ(ビデオカードでいうビデオメモリに相当。Tesla/CUDAではグローバルメモリと呼ぶ)は1.6GHzデータレートの容量1.5GBであることくらいで(GeForce 8800 GTXでは1.8GHzデータレート、768MB)、動作クロックも同じだ。また、前述しているように、ディスプレイ出力用のDVIコネクタが搭載されていない点も大きな物理的相違点であるといえる。