民放連に続いて、NHKからの意見表明があった。中間取りまとめ案の全体については、「産業の規律体系としての視点に偏らず、情報通信技術による恩恵が個人間の格差なく国民に行き渡るようにすべき」とし、新しい法制度によって得られる国民の利益について議論を深めるべきだと主張した。レイヤー型法体系にすることについては、研究会の堀部座長からの質問に答える形で「レイヤー型がいいかどうかは言い切れず、それぞれのレイヤーについてどう考えるかが重要である」と述べた。
コンテンツに対する直接的な規律の是非については、「対象範囲を明確にすることが必要だが、コンテンツの内容が適法であるかどうかの審査が常態化する恐れがある」と懸念を表明。規律の根拠も「慎重の上に慎重を」と、コンテンツ制作者への萎縮効果も指摘している。
また、新しい法制度における公共放送の位置づけについて、「できるだけ早い段階から、全体との整合性を確保しつつ検討することが適当」とし、できるだけ早く議論を始めるべきだと主張した。さらに、NHKが行っているBS放送や国際放送についても、「メディアの分類の中でどう位置づけられるか早急に考えて欲しい」との要望を示した。
CATV事業の支障にならないよう要望
続いて意見表明した日本ケーブルテレビ(CATV)連盟は、CATV事業が、地上波放送の再送信、自主制作番組、多チャンネル有料サービスなどの放送サービス事業から、インターネットサービス、電話サービスまで多様な事業で成り立っており、中間取りまとめ案における全てのレイヤーにまたがる事業であると説明。「これからの議論は、我々の事業の支障にならないようにしてほしい」と要請した。
さらに、「放送サービス事業においては、専門チャンネルだけではなく、地域の行政、安全、防災・災害などの情報を提供する機能を有しているため、コンテンツレイヤーにおいて特別メディアサービスに分類される部分があることを考慮してほしい」としている。
堀部座長からの「レイヤー型の法体系に賛成するかどうか」との質問には、「実際どういう事になるか分からない部分もあるが、決定的にこれが問題だという部分はない」と述べ、消極的賛成の意向を明らかにしている。
また、意見書で「CATVは地域公共放送としての役割を期待されており、専門放送以外の機能も有している点を今後の議論で配慮してほしい」とするCATV連盟の要望に関連して、研究会構成員で野村総合研究所理事長の村上輝康氏が「地震のP波到達を利用して行う緊急地震速報についてはどう対応するのか」と質問。これに対し、CATV側は「家庭内にひいたケーブルを分岐させた音声サービスを行う予定だが、導入に関しては各事業者の判断に委ねる方針」と回答した。
衛星放送協会からも、最初に、衛星放送に関する事業内容についての説明があった。中間取りまとめ案における各レイヤーについて、委託放送事業者(および衛星役務利用放送事業者)がコンテンツレイヤーを、スカイパーフェクト・コミュニケーションズの「スカイパーフェクTV!」がプラットフォームを、ジェイサットや宇宙通信などの受託放送事業者が伝送インフラを担っている。
同協会は、衛星放送事業者が制作するコンテンツの市場が買い手市場となっており、事業環境的に厳しいと述べ、「規制緩和につながるレイヤー型法体系への転換について基本的な方向性としては賛成」との意見を表明した。その上で、新制度において、衛星放送における委託放送事業者、衛星役務利用放送事業者の制度は維持されるのか、あるいは変更されるのかが疑問点として存在すると述べた。
慶應義塾大学デジタルメディア・コンテンツ統合研究機構教授で研究会構成員でもある中村伊知哉氏が主張していたように、今後のコンテンツ市場の行方などについては、放送事業者が保有する膨大なコンテンツをどうするかという問題が極めて大きな要素を占める。民放連などが今回の中間取りまとめ案について反対する中、前回の公開ヒアリングでソフトバンクが主張したような放送コンテンツの開放・流通のためのルール整備を含め、こうした意見への対応が迫られている研究会が放送事業者の意見や要望をどの程度反映させていくかにより、新しい法制度の今後の議論は大きく左右することになりそうだ。