日本AMDは11日、クアッドコアOpteronに関する国内向け発表会を開催した。米AMDの上級副社長兼最高技術責任者(CTO)であるPhil Hester氏が来日し、「現在のデータセンターのニーズに応えるだけでなく、将来のニーズにも応える製品」としてクアッドコアOpteronの特徴、機能、性能を説明。さらに将来に向けて今後の製品のロードマップも紹介している。

米AMD上級副社長兼最高技術責任者 Phil Hester氏

Phil氏は冒頭、今回発表されたクアッドコアOpteronの概要を説明した。ラインナップは標準モデルに加え、低消費電力モデルのHE、パフォーマンスモデルのSEが用意されている。標準モデル、HEモデルは発表と同時に出荷を開始するが、パフォーマンスモデルのSEは07年Q4での出荷を予定。標準モデル、HEモデルに関しても、Q4にはより高クロックの製品が投入される見込みだ。

まずは標準モデルとHEモデルを投入し、Q4にSEモデルおよび標準、HEモデルの高クロック版を投入する

クアッドコアOpteronの特徴については、ネイティブ・クアッドコアによるパフォーマンス向上に加え、CPUコア、(2MBのL3など)キャッシュ、浮動小数点演算器などの改良、RVIなど仮想化技術を盛り込み、従来と同じソケットで利用できるなどの投資保護、そしてこれらを盛り込みつつもワット性能におけるリーダーシップを堅持するとされている。Phil氏は、これらひとつひとつの機能をデータセンターのニーズに照らし合わせたうえで、クアッドコアOpteronを「データセンターのために創られたプロセッサ」と紹介する。

クアッドコアOpteronに投入された技術と特徴

データセンターが求める様々なニーズに対し、機能・性能で解決策を提供する

性能に関しては同社がテストしたという3つのデータが示された。1つ目はエンタープライズ系のベンチマークにおいて、従来のデュアルコアOpteronと比較し、クアッドコアOpteronは性能が平均54%向上するというもの。2つ目は仮想化機能における、新機能「Rapid Virtualization Indexing(RVI)」による性能向上。そして3つ目はパフォーマンス/ワット性能で、Opteron 2350とXeon 5345を比較し、平均26%ほどクアッドコアOpteronが勝っているというデータだ。

デュアルコア対クアッドコアによる比較では54%という性能向上。アップグレードメリットを強調

仮想化に関してもRVIで性能を向上

パフォーマンス/ワット性能ではライバルよりも40~60W低消費電力とアピール

Phil氏はOpteronの今後のロードマップに関しても触れている。まず、現在のSocket Fプラットフォームは08年に登場予定の45nm世代クアッドコアまで続く。その後09年中頃に予定されているのが第3世代プラットフォームで、その頃の製品ではオクタルコア(8コア)を採用する予定だとされる。

現在のSocket Fは08年の45nm世代まで。同じプラットフォームを長期にわたって提供することで投資を保護する

CPUとGPUの融合、その後はプラットフォームやシリコンレベルで高性能化

07年~08年のロードマップでは、まず今年後半~来年初頭にかけて、今回のラインアップでは発表されなかったユニプロセッサ(1P)向けのクアッドコアOpteron(コードネーム:Budapest)を投入する。08年半ばになると45nmプロセスのShanghai(コードネーム)が登場する。デスクトップ向けプロセッサ「Phenom」についても触れられており、ネイティブ・クアッドコアのデスクトップ投入は07年12月の予定という。

1P向けのBudapestは今年後半~来年初頭で投入。さらに08年には45nmプロセスへと移行

デスクトップ向けのネイティブ・クアッドコアCPU「Phenom」は12月。チップセットにはさりげなくAMD 7xxの表記

会場にはクアッドコアOpteronを採用する(あるいは採用する予定の)多くのパートナー企業も一堂に会した。AMDは、第1世代Opteronの投入時はゼロからのスタートだったが、今現在では35を超えるパートナーを獲得していると紹介。今後もパートナーとの協業を深め、OEM・ソフトウェア・インテグレーターなどとエコシステムの拡張に努めていくとアピールする。

パートナー企業7社の代表が集まった

着実にパートナーを増やしてきたOpteron

様々な企業・団体と協業しエコシステムを強化していくという

日本AMD代表取締役社長の森下正敏氏は、日本は北米に次ぐ世界第2位の市場であり、この日本市場が最重要課題であるとし、国内でのOpteron販拡に意欲を見せる。

日本AMD代表取締役社長 森下正敏氏

ベンチマーク結果も披露

スライドのみの資料だが、スレッド数を増やした際のパフォーマンスの変化

こちらもスライドで紹介されたRVIオン/オフでの処理速度比較

当日は実際に、実機を用いたベンチマークテストのデモンストレーションも披露された。まず消費電力のテストが行われ、Opteron 2350とXeon 5345(ともに2Pシステム)のシステムで、アイドル時で約60W、ピーク時で10%程度、Opteronシステムの方が消費電力が低いという結果が示された。また、Opteronの新機能であるRVIの機能を、それぞれオン/オフした2基のシステム(ともにBarcelona 8346相当品×4P)を用意してのカーネルベンチが行われ、約15%ほどの性能向上があるという結果が示された。

Opteron 2350とXeon 5345との消費電力の比較(写真はピーク時)

RVIオン(左)とオフ(右)での比較。RVIによるアクセラレーション効果が示された

ベンダー各社が製品を展示 - ASUSTeKは未発表マザーを用意

パートナー各社の製品展示では、イージェネラ、クレイ・ジャパン、サン・マイクロシステムズ、日本IBM、日本HP、デルなどがラックマウントやブレードサーバを展示。ほか、TyanやSuper Micro、ASUSTeKといったマザーボードベンダーが製品を展示しており、なかでもASUSTeKは、Quad FX向けのL1N64-SLI WSのBIOSアップデート版である「L1N64-SLI WS/B」、そしてAMD最新チップセットを搭載するという未発表マザー「L1A64 WS」を展示していた。

ビジュアルテクノロジーの「VT64WS 4300 OQF-S」

VT64WS 4300 OQF-Sは、2段に計4つのクアッドコアOpteronを搭載。メモリは1枚あたり4GBのモジュールが32枚で計128GB

サン・マイクロシステムズ

日本IBM

日本HP

デル

ASUSTeK

AMDの最新チップセットを搭載するとされるASUSTeKの「L1A64 WS」。4本のPCI Express x16スロットを装備