森田芳光監督の最新作『サウスバウンド』の完成披露試写および舞台挨拶が11日、都内で行われた。主演の豊川悦司(45)、妻役の天海祐希(40)、2人の子供を演じた田辺修斗(13)、松本梨菜(9)、北川景子(21)、そして森田芳光監督(57)が登壇し、撮影時のエピソードや作品への思いを語った。
「アロハシャツで失礼します」と開口一番笑いを取った豊川悦司。居並んだ共演者の服装を見て「こんなフォーマルにかしこまるような作品でもないと思うんですけどねえ……今ちょっと後悔しています。でもこの映画は絶対後悔させない仕上がりになってますのでご期待ください」とうまくまとめた。
『サウスバウンド』は『イン・ザ・プール』などで知られる奥田英朗の同名小説が原作。5人家族の物語だが、大黒柱たる上原一郎(豊川悦司)は修学旅行の積立金が高いことに腹を立て、「学校と旅行会社の癒着か? ナメてるな、今時」と校長に直談判しに行ってしまうような破天荒な父親。3人の子供たちは他人の目を気にしてこの父親を「恥ずかしい」と思っている。そして家族をまとめる強き母親・さくら(天海祐希)が突然、沖縄の西表島に引っ越すことを宣言。移住した先で東京にいた時とはまったく違う一郎の行動を目の当たりにした子供たちは……。
監督が出演者に要求したのは「とにかくダサく!」ということだったという。実際、作品のスチールを見ると5人家族の格好は実にパッとしない。この要求に応えるため、全編ほぼスッピンで出ているという天海祐希は「きちんとメイクして、キレイに着飾ったところを豊川さんに見ていただきたかったんです」と主張。「さくらは芯の強い、ほがらかで優しい母親なんですが、そんな風にいられるのは一郎さんが大黒柱として後ろにいてくれたからだと思います。すごく好きなラストシーンになっていますので、お見逃しなく」。
下の2人とは年の離れた姉・洋子を演じるのは北川景子。普段は仕事熱心で家族の団らんには加わろうとしないが、「観た人に"両親に感謝してみようかな"と思ってもらえるような演技を心がけました。あと、今回はダサく、と言われたので一生懸命ダサく見えるようにがんばりました(笑)」と、ファッション誌『SEVENTEEN』のモデル出身の北川は複数の意味で"頑張った"ようだ。
本作がデビュー作となる田辺修斗は小学6年生の二郎を熱演。「二郎とはやんちゃなところが共通してます。親にもよく叱られるし……」とポツリ。その両親が会場入りしているということで観客からは拍手が沸き起こった。豊川は「お母さん、あなた、すごい俳優作りましたよ。きっと大物になりますからね」と田辺の俳優としての素質に太鼓判を押していた。
そして末っ子の桃子役は若干9歳ながら、『Dr.コトー診療所』(フジテレビ系)などで活躍している松本梨菜。「すごく明るい元気な子で、私と性格が似ていてとってもやりやすかったです。がんばって演じたので、みなさんもがんばって……あ、がんばらなくていいので(笑)、楽しんで観てください」と可愛らしい挨拶で会場を沸かせた。森田監督から「僕の演出の細かいところまでしっかり理解して忠実に演じてくれる。すごい女優さんです」と賛辞が送られると、照れくさそうに体をよじっていた。
「さっき控え室で何を喋ろうか困ってる、と言っていたのにみんなそれぞれ笑いを取っていて、やっぱり俳優は侮れないなと思いました」と森田監督。「見ておわかりのとおり、いい家族だと思います。田辺くんの大事なシーンで、セリフが何度やってもうまくいかなかったことがあって、僕はあまり怒らない監督なんですけどその時怒っちゃったんですよ。そうしたら、豊川さんと天海さんの両親が『こうしたらいいんだよ』とか『息を大きく吸って落ち着いてごらん』とか優しくアドバイスしてくれて。役者に助けられた現場は久しぶりでしたね(笑)」と撮影を振り返った。
5人の奇跡のキャスティングが生み出す奇跡の面白さをスクリーンで見届けよう。公開は10月6日。新宿ガーデンシネマ、シネ・リーブル池袋ほかにて全国ロードショー予定。