モバイルノートPC「FlyBook」を国内で販売するダイアローグ・ジャパンは6日、KDDIと共同で開発したというCDMA 1X WIN通信機能内蔵ノートPCを2モデル発表した。新シリーズとなるコンパクトノートPC「FlyBook V5」と、従来から販売されている「FlyBook VM」の新モデルに搭載して販売する。オープン価格で、正式な発売時期は未定だが、9月後半には提供の用意が整う見込みで、実売価格はモデルにより異なるがいずれも20万円台前半の価格帯に収まる見込み。

KDDIの通信モジュールを内蔵する「FlyBook V5」(左)と「FlyBook VM」

KDDIの通信モジュールを新モデルに搭載

KDDIのCDMA 1X WIN対応通信モジュール「KCMP」(京セラ製)を組み込んだノートPCで、データ通信カードや携帯電話との接続をしなくても下り最大2.4Mbps/上り最大144Kbps(ともに規格上の理論値)のデータ通信が行える。KDDIとの回線契約は、個人ユーザーの場合オンラインサインアップにより可能(要クレジットカード・法人は書面契約のみ)で、購入後煩雑な手続きを経なくても手軽に通信機能が利用できる。料金はauのデータ通信専用カード向け料金コースが適用される。

KCMPを手に通信機能を紹介するダイアローグ・ジャパンのシニアアドバイザー・吉井孝史氏

個人ユーザーはオンラインサインアップで回線契約が可能

通信機能に関する各種ユーティリティソフトを搭載。KCMP、無線LAN、Bluetoothの電源オン/オフを行う「FlyBook Control Center」(左)と、接続/切断や通信量の表示を行う「ワイヤレスWAN接続マネージャー」

「FlyBook V5」は8.9インチ液晶ディスプレイを搭載するモバイルノートPCで、現在販売されている「FlyBook V33i」の後継商品。ディスプレイは回転式でタッチパネル操作にも対応し、反転させればタブレット型のスタイルで使用することもできる。235×165×29.5mm・1.27kgの小型軽量な本体ながら、CDMA 1X WINのほか、IEEE802.11a/b/g無線LAN、Bluetooth、有線のギガビットLANといった豊富な通信機能を備えるのが特徴。CPUはCore Duo U2500(1.20GHz)を搭載、標準バッテリーで約4.3時間の動作が可能。

「FlyBook V5」シリーズは8.9型の小型モバイルノート。豊富に通信機能と入出力端子が本体に標準で用意されているのが特徴

「FlyBook VM」は12.1型液晶ディスプレイを搭載し、画面の支持部が伸び縮みする構造を持っているモバイルノートPCで、画面自体をユーザーの側に近づけることができるのが特徴。現在販売されているモデルのワイヤレス通信機能は、無線LANとBluetoothのみだったが、今回の発表で新たにCDMA 1X WINに対応した。CPUは同じくCore Duo U2500(1.20GHz)を搭載し、標準バッテリーで約2.3時間の動作が可能。

「FlyBook VM」シリーズは画面の支持部が伸び縮みし、より疲れにくい位置に画面を移動できるほか、飛行機の座席などで前の背もたれが倒れてきてもPCを使える

今回発表されたKCMP搭載モデルには「KDDI Module Inside」のロゴシールが貼られる予定

FOMA/SoftBank 3G対応モデルも発表

さらに、V5/VMの両シリーズともに、HSDPAを含むW-CDMA方式に対応する通信モジュールを搭載したモデルが用意される。これらのモデルにはSIMカードスロットが用意され、すでに契約済みのW-CDMA携帯電話のSIMカードを差し替えることで通信が行える。加えてGSM/GPRS/EDGEの各方式にも対応しており、世界各国の広いエリアで通信が可能。

NTTドコモのFOMA(「Mopera U」を利用した場合)およびソフトバンクモバイルのSoftBank 3Gサービスで、それぞれHSDPAを含むデータ通信が利用できることを確認しているといい、ダイアローグ・ジャパンのサポート窓口では接続方法の紹介も行う。扱いとしては、FlyBookがいわゆる「SIMロックフリー」の端末に相当する形となる。イー・モバイルのネットワークは同じW-CDMA/HSDPA方式を採用しているが、FlyBookの通信モジュールが1.7GHz帯の周波数に対応しないため利用できない。また、従来シリーズのV33iでもFOMAおよびSoftBank 3Gを利用可能であることが確認されたとしている。

W-CDMA/HSDPA対応モデルにはSIMカードスロットが用意され、FOMAおよびSoftBank 3G携帯電話のSIMカードを利用可能。携帯電話と同じく、バッテリーを外してからカードを抜き差しする構造になっている

W-CDMA/HSDPA対応モデルでは音声通話も可能

V5/VMとも、CDMA 1X WINモジュールとHSDPAモジュールの同時搭載は不可能で、購入時にどちらかを選択することになる。価格はCDMA 1X WIN対応モデルのほうが若干安くなる見込みという。なお、CDMA 1X WIN対応モデルは国際ローミングには非対応。そのほか、携帯電話網を使用する通信機能が不要なユーザーのために、通信モジュール非搭載モデルも用意される。

KDDIへの対応で国内主要3社の携帯電話網が利用可能に

発表にあわせて来日したDialogue TechnologyのCEO・Jack Lee氏は、KDDIの通信モジュールを内蔵した新製品について、「ただ部品を内蔵したのではなく、高いパフォーマンスが出るように何度もテストを重ねており、KDDIとの協力の意義は大きかった」と述べ、接続性と高い品質を確保するためにKDDIと協業できたことに対する謝意を表した。日本市場については「まずはユーザーに満足していただける製品を提供することが先だが、いずれは日本に研究開発拠点を置き、日本製のFlyBookを提供できれば」と将来の夢を語った。

Dialogue TechnologyのCEO・Jack Lee氏

ダイアローグ・ジャパン代表取締役の金子智子氏

また、発表会は東京・秋葉原のダイアローグ・ジャパン本社1階に設けられたショールームで行われたが、新製品の発表にあわせてこのショールームも営業を本格化し、最新モデルの実機展示、通信機能の体験、直接販売などを行う体制を整える。同社代表取締役の金子智子氏は「ダイアローグ・ジャパンは本社の単なる一支店ではなく、(日本に根差した)ひとつの法人として設立した。日本のお客様に対してしっかりとしたサポート体制を提供したい」と話し、ショールームを通じて国内のユーザーへのPRや情報提供を強化したいとの意向を示した。