東芝は6日、ハードディスクドライブの記録密度を1.5倍に高められる「ディスクリートトラックレコーディング(DTR)技術」を開発し、1.8型HDDのディスク1枚で120GBのデータ記録を実現したHDDの試作に成功したと発表した。同社では、2009年中にDTR技術を採用したHDDの量産化を目指すとしている。

DTR技術は、現行の垂直磁気記録方式のディスク上のトラック間に溝を形成し、隣接するトラック間の相互干渉を低減して記録密度を上げるというもの。現行の垂直磁気記録方式では隣接するトラック間に相互干渉が発生するためトラックピッチを詰めることは困難とされていたが、DTR技術によってトラックピッチの大幅な縮小や信号の品質向上を実現することにより、ディスク1枚あたりの記憶容量を従来の1.5倍にまで高めた。

トラックとトラックの間に溝を配置することで相互干渉を抑え、記録密度を高めている

また、1.8型や2.5型など径が小さい磁気ディスクメディアへの適用が容易なため、同社では今後開発される小型ハードディスクの大容量化に期待を寄せている。なお、DTR技術の開発にはNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の国家プロジェクト「ナノメータ制御光ディスクシステム」の成果を用いて開発された電子ビーム露光装置を利用している。

今回試作された1.8型HDDは、従来方式では1枚あたり80GB容量のディスクにDTR技術を適用することによって記憶容量を120GBに向上させ、面記録密度516Mビット/平方ミリメートル(333Gビット/平方インチ)を実現した。また、ヘッドの位置を決定するために使われる基準信号、サーボパターンもディスク上に形成しているのが特徴だ。

現行の垂直磁気記録方式を採用したHDDと見た目はほぼ同じだが、ディスク表面に回折光が現れている

ヘッド位置を決めるサーボパターンがディスク上にある

ノートPCやポータブルメディアプレイヤー、デジタルビデオカメラ、カーナビゲーションシステムといった様々な用途に小型ハードディスクが活用され、さらにはAVPCといった新たな需要やハイビジョン映像の普及による大容量データ保存に対するニーズの高まりをうけて、ハードディスクのさらなる大容量化が求められている、と同社はDTR技術開発の理由を語っている。