米Advanced Micro Devices(AMD)は8月30日(現地時間)、x86プロセッサ向け拡張機能セット「SSE5」を発表した。今回のSSE5では3オペランド命令のサポートのほか、複数の乗算・加算命令をセットにして一度に実行可能なFused Multiply Accumulate(FMA)などの機能が新たに搭載されている。SSE5はAMDが2009年にリリースを予定している次世代プロセッサ「Bulldozer(開発コード名)」での採用が見込まれており、現在は開発者向けの仕様書が公開されている。
SSE(Streaming SIMD Extentions)はその名の通り、大量のデータに対する同一演算の繰り返しなど、SIMD(Single Instruction Multiple Data)と呼ばれる命令処理を行うための拡張機能セットである。これにより、特に画像処理などマルチメディアで求められる演算処理を高速化し、プロセッサの処理効率を高めることができる。SSEはIntelのPentium IIIでの採用以降、扱えるデータ長を拡張するなど段階的に進化を続けており、今回SSE5と呼ばれる新しい拡張命令セットでは、さらなる処理の効率化と命令セットのシンプル化を実現する3オペランド命令とFMAのサポートが行われた。
オペランド(Operand)とは1つの演算命令(Instruction)が処理可能な演算データのこと。処理可能なオペランドの数が2から3へと増えることでより複雑な命令を実行でき、複数の演算命令を1つにまとめることが可能になるため、処理効率が増す。AMDによれば3オペランド命令をサポートするのは現在、一部のRISCアーキテクチャにとどまっており、x86のようなCISCベースのプロセッサでは初の試みだという。一方のFMAは、3オペランド命令を活用して複数の乗算や加算命令を1セットで実行するもので、これまで複数命令が必要だった処理をよりシンプル化できる。これにより、3D画像のシェーディング、写真のレンダリング、音声の空間処理、複雑なベクトル演算などの処理を高速化できるという。