既報の通り、台湾のPCメーカーAcerは8月27日(現地時間)、米Gatewayの買収で合意したと発表した。Gateway株1つあたり1.90ドルを割り当て、買収総額は7億1000万ドルになる。Acerによれば、Gatewayは複数ブランドを通して年間2000万台以上のPCを出荷し、150億ドル以上を売り上げている。今回の買収でAcerは世界第3位のPCメーカーの地位を確実なものにする。必要な手続きを経て、2007年12月には買収が完了する見込み。

PC/パーツメーカーの著名ブランドとして成長しつつあるAcerは現在、中国のPC/家電メーカーLenovoと世界のPC市場第3位の座を激しく争っている。Lenovoは2005年に米IBMのPC部門を買収して以降、そのブランドと既存顧客ベースを活かして世界シェア第3位の座についていた。Lenovoは8月初旬に、欧州を中心に地盤を築くオランダのPCメーカーPackard Bell買収の意向を発表しており、これまでの米国とアジアに加え、欧州事業の強化で世界のトップベンダーへと躍り出ることを画策していた。今回のAcerのGateway買収は、このLenovoの拡大政策に対抗するものとなる。Gatewayは世界シェアでこそトップ5圏外だが、米国内ではいまだ第3位のシェアを誇っており、根強い人気がある。AcerはGateway買収で米国での強力な地盤を築くことが可能となる。

またGatewayは同日、Acerによる買収発表に先駆ける形で興味深い発表を行っている。それによれば、Gatewayは同社の持つ優先交渉権(Right of First Refusal)を行使して、Packard Bellの親会社であるPB Holding Companyのすべての株式をその保有者であるLap Shun Hui氏から購入する意向だという。Hui氏は2004年にGatewayが買収したeMachinesの創業者であり、買収後はGatewayから離れて投資家として活動していた。同氏は2006年、当時Packard Bellの親会社であったNECから同社の株式をすべて買い取り、その事業を自身の傘下へと収めている。Gatewayが権利を行使してHui氏からのPackard Bell株の取得を実現すれば、同社は事実上、新生Acerの子会社となる。LenovoにとってはGateway買収でシェアに水を空けられ、さらに拡大の足掛かりとしていたPackard Bell買収案が流れることとなり、ダブルパンチを受けた状態になる。